概要
クロムニェジーシュの庭園と宮殿は、チェコ東部モラヴィア地方に位置する、かつてのオロモウツ大司教の居城と庭園群です。バロック様式の傑作として知られ、保存状態の良さから1998年に世界文化遺産に登録されました。宮殿、宮殿の庭園、そして花の庭園の3つの主要な要素から構成されています。
主な構成資産
大司教の宮殿
17世紀末にイタリア人建築家フィリベルト・ルッケーセとジョヴァンニ・ピエトロ・テンカッラによってバロック様式で再建されました。内部には豪華な装飾が施された部屋が多数あり、特に議会の間(スニェモヴニー・サール)は壮麗です。また、ティツィアーノの『マルシュアスの皮剥ぎ』など、ヨーロッパ有数の絵画コレクションを所蔵する美術館としても知られています。映画『アマデウス』や『不滅の恋/ベートーヴェン』のロケ地としても使用されました。
宮殿の庭園(ポドザーメツカー庭園)
宮殿に隣接する広大なイギリス式風景庭園です。19世紀に再設計され、自然の景観を活かした配置が特徴です。小川や池、ロマンチックな雰囲気の建物が点在し、市民の憩いの場となっています。
花の庭園(クヴィエトナー庭園)
宮殿から少し離れた場所にある、イタリア・ルネサンス様式の幾何学式庭園です。17世紀後半に造られ、花壇や生垣がシンメトリーに配置されています。長さ244メートルの列柱廊(コロナーダ)や、中央に位置する八角形のロタンダ(円形建築)が見どころです。
世界遺産登録基準
- (ii) クロムニェジーシュの庭園と宮殿は、17世紀から18世紀にかけてのヨーロッパ大陸におけるバロック様式の宮殿・庭園建築の発展において、極めて早い時期の優れた作例である。
- (iv) イタリアからアルプスを越えて中央ヨーロッパに伝わったバロック様式の貴族の邸宅と、それに付随する庭園の様式を、非常に良好な形で残している。
参考文献
- UNESCO World Heritage Centre. “Gardens and Castle at Kroměříž”. https://whc.unesco.org/en/list/860