ドゥルミトル国立公園とは
ドゥルミトル国立公園は、モンテネグロ北西部に位置する山岳公園で、1980年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。公園は、バルカン半島ディナル・アルプス山脈の一部であるドゥルミトル山塊と、その周辺を流れるタラ川、ドラガ川、スシツァ川の渓谷を含みます。氷河によって形成された雄大な山岳景観と、ヨーロッパで最も深いタラ川渓谷が織りなす壮大な自然美で知られています。
世界遺産登録基準
- (vii) 氷河によって削られた鋭い山頂、数多くの氷河湖、「ドゥルミトルの瞳」と呼ばれる美しい湖沼群、そしてヨーロッパ最深のタラ川渓谷など、際立って美しい自然景観を有している。
- (viii) 石灰岩のカルスト地形が氷河の浸食作用を受けたという、地球の歴史における地質学的・地形学的プロセスを示す顕著な見本である。
- (x) 多様な標高と微気候により、豊かな生物多様性が育まれており、多くの固有種や希少種を含むヨーロッパの植物相・動物相の保全にとって極めて重要な地域である。
遺産の価値
ドゥルミトル国立公園の価値は、その地質学的特徴と生物多様性にあります。
- 氷河地形とタラ川渓谷:公園内にはボボトヴ・クク(2,522m)を最高峰とする48の峰が連なり、18もの氷河湖が点在しています。一方、公園を北に流れるタラ川は、全長80km、最も深い地点で1,300mに達する巨大な渓谷を形成しており、その規模と美しさは圧巻です。
- 豊かな生物多様性:公園はヨーロッパにおける生物多様性のホットスポットの一つです。標高差に応じて多様な植生が見られ、特にタラ川渓谷沿いにはヨーロッパで最後の原生的な黒松(ブラックパイン)の森が残っています。また、ヒグマ、オオカミ、ヨーロッパオオライチョウなどの大型動物も生息しています。