概要
「ダラム城と大聖堂」は、イングランド北東部、ウィア川が蛇行してできた岩がちな半島の上にそびえ立つ世界文化遺産です。11世紀のノルマン・コンクエスト後に建設され、スコットランドからの防衛拠点として、また聖カスバートの聖遺物を祀る巡礼の中心地として、宗教的・軍事的に絶大な権力を持っていました。この城と大聖堂は、ノルマン人がその権威を示すために築いた要塞建築の最も優れた例の一つとされています。
建築様式と歴史的意義
ダラム大聖堂は、ヨーロッパにおけるノルマン建築(ロマネスク様式)の最高傑作と評されています。特にその身廊の天井に用いられたリブ・ヴォールトは、ゴシック建築に先駆ける画期的な技術であり、建築史上非常に重要です。一方、ダラム城は、かつて絶大な権力を誇ったダラム司教領主の居城であり、現在はダラム大学のカレッジとして使用されています。
| 構成資産名 | 特徴 |
|---|---|
| ダラム大聖堂 | 1093年創建。初期のリブ・ヴォールト構造を持つ、ヨーロッパで最も優れたノルマン建築の一つ。聖カスバートの聖遺物を祀る。 |
| ダラム城 | ノルマン様式の要塞。かつてのダラム司教領主の居城で、現在はダラム大学の一部。 |
世界遺産登録基準
- (ii) ダラム大聖堂は、当時としては最大級の建造物であり、そのリブ・ヴォールト天井はゴシック建築の先駆けとなる画期的な技術であった。
- (iv) 司教領主の権威の象徴である城と大聖堂が一体となった景観は、中世における領主権力の様子を伝える顕著な見本である。
- (vi) 聖カスバートと聖ビードの聖遺物を祀る大聖堂は、中世を通じてキリスト教信仰の重要な中心地であり、巡礼地であった。