概要
「デルベントのシタデル、古代都市、要塞建築物群」は、ロシア連邦ダゲスタン共和国に位置する、古代から続く要塞都市の遺跡です。2003年に文化遺産に登録されました。カスピ海とカフカス山脈に挟まれた狭い平地に位置し、古来よりユーラシア大陸の東西南北を結ぶ交通の要衝であり、文明の十字路として栄えました。特にサーサーン朝ペルシャ時代に築かれた堅固な防御施設が有名です。
歴史的背景
デルベントは「カスピ海の門」と呼ばれ、北方の遊牧民の侵入を防ぐための戦略的に極めて重要な拠点でした。現在の要塞の基礎は、5世紀から6世紀にかけてサーサーン朝ペルシャによって築かれました。その後、アラブ、モンゴル、ペルシャ、オスマン帝国、ロシア帝国など、様々な勢力によって支配され、多様な文化が刻み込まれてきました。
主要な建築物群
この遺産は、丘の上の城塞、そこからカスピ海に向かって伸びる2つの城壁、そしてその間に広がる古代都市から構成されています。
- ナルイン・カラ城塞:丘の上にそびえる壮大な城塞で、宮殿や浴場、貯水槽などの遺構が残っています。デルベントの防御システムの中核をなしていました。
- 双子の城壁:山からカスピ海に向かって約3.6kmにわたって平行に伸びる2つの巨大な石の壁。壁の内部に中世の都市が発展しました。
- ジュマ・モスク:城壁内部にある8世紀に建設されたモスクで、ロシア最古級のモスクの一つとされています。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたとされています。
- (iii) 5世紀以上にわたる都市の歴史と、多様な文化の影響を伝える、他に類を見ない証拠である。
- (iv) サーサーン朝ペルシャに始まり、その後の支配者たちによって発展したデルベントの防御施設は、古代から中世にかけての軍事建築技術の傑出した例である。