概要
バフラの砦は、オマーン内陸部のジェベル・アフダル山麓に位置する巨大な城塞で、1987年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。日干し煉瓦で築かれたこの砦は、イスラム以前の時代に起源を持つとされ、12世紀から15世紀にかけてバヌ・ネブハン朝のもとで現在の姿に拡張されました。城壁、塔、モスク、住居などが一体となった複雑な構造は、当時のオマーンにおける建築技術と防衛戦略の高さを物語っています。
世界遺産登録基準
- (iv) バフラの砦とそれに隣接するオアシス集落は、特定の文明や文化的伝統の顕著な例であり、その防御的な建築様式は、この地域を支配したバヌ・ネブハン朝の権力と関連しています。
砦の構造
砦は、その機能と防御思想を反映した多様な要素で構成されています。
| 構造物 | 特徴 |
|---|---|
| 城壁 | 周囲約12kmに及ぶ日干し煉瓦の城壁が、砦とオアシス全体を取り囲んでいます。 |
| 見張り塔 | 城壁の要所に設けられ、外部からの侵入を監視する役割を果たしました。 |
| カスバ | 砦の最も古い中心部分で、司令官の住居や兵舎などが含まれています。 |
| スーク(市場) | 砦の麓には、伝統的な市場があり、現在も地域の生活の中心となっています。 |
保存と修復
バフラの砦は、登録翌年の1988年に、崩壊の危機にあるとして「危機遺産リスト」に登録されました。その後、オマーン政府とユネスコの協力により大規模な修復プロジェクトが実施され、保存状態が改善されたことから2004年に危機遺産リストから除外されました。この修復活動は、伝統的な素材と工法を用いて行われ、文化遺産保存の成功例とされています。