カゼルタの18世紀の王宮と公園、ヴァンヴィテッリの水道橋とサン・レウチョの邸宅群
カゼルタの王宮は、イタリア南部のカンパニア州カゼルタに位置する、18世紀に建設された壮大なブルボン朝の宮殿です。ナポリ王カルロ7世(後のスペイン王カルロス3世)の命により、建築家ルイージ・ヴァンヴィテッリが設計しました。フランスのヴェルサイユ宮殿に対抗し、それを凌駕することを目指して建てられ、ヨーロッパにおけるバロック建築の最後期の傑作とされています。広大な庭園、それを潤すための巨大な水道橋、そして理想都市を目指したサン・レウチョの絹織物工場と労働者の住居群と共に、1997年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
- (i) 18世紀の記念碑的建築群の壮大な掉尾を飾るものであり、建築、庭園、都市計画、景観設計の全てにおいて傑出した価値を持っています。
- (ii) ヴェルサイユ宮殿など既存の王宮から多大な影響を受けつつ、それを発展させた独自の様式は、ヨーロッパの他の宮殿建築にも影響を与えました。
- (iii) 啓蒙主義の思想を物質的な形で表現しており、建築と自然の関係性、そして産業と社会の理想的な関係性を追求した点で、他に類を見ない証拠です。
- (iv) 産業革命以前の時代において、土木技術(水道橋)と建築、都市計画(サン・レウチョ)を統合した大規模プロジェクトの顕著な例です。
主要な構成資産
この世界遺産は、王宮本体だけでなく、その周辺の関連施設群も含まれています。それぞれが18世紀の絶対王政の権力と啓蒙思想を反映しています。
| 建築物 | 特徴 |
|---|---|
| 王宮本体 | 部屋数1200室を誇る壮大なスケールと、豪華な内装を持つ。 |
| 庭園 | 全長3kmに及ぶ軸線上に噴水や滝を配した壮麗なイタリア式庭園と、イギリス式庭園からなる。 |
| ヴァンヴィテッリの水道橋 | 庭園に水を供給するために建設された、全長約38kmに及ぶ巨大水道橋。 |
| サン・レウチョの邸宅群 | 絹織物工場を中心とした理想的な産業都市コミュニティ。 |
観光と保全
カゼルタの王宮とその関連施設群は、南イタリアの主要な文化観光地です。特に王宮の豪華絢爛な内装と、どこまでも続くかのような庭園の眺めは圧巻です。広大な敷地と多数の建造物を維持管理するためには多大な労力が必要であり、建造物の修復や庭園の維持、水道橋の構造保全などが継続的に行われています。