概要
マデイラ島の照葉樹林(ラウリシルヴァ)は、大西洋に浮かぶポルトガル領マデイラ島に残る、広大な原生林です。この森林は、数百万年前の第三紀にヨーロッパ南部を広く覆っていた照葉樹林の、現存する最大かつ最も保存状態の良いものです。その独特の生態系と生物多様性の価値から、1999年に世界自然遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
- (ix) 第三紀に起源を持つ照葉樹林生態系の生きた化石であり、生物学的・生態学的な進化の過程を示す顕著な見本です。
- (x) 絶滅危惧種を含む多くの固有種の生息地として、生物多様性の保全上、極めて重要な地域です。
生態系の価値
マデイラ島の照葉樹林は、年間を通じて温暖で湿度の高い気候に育まれた、月桂樹科の樹木を中心とする常緑広葉樹林です。氷河期にもその影響をほとんど受けなかったため、太古のヨーロッパの植生を今に伝えています。この森林は島の水循環において重要な役割を果たしており、豊かな水源を涵養し、島全体の生態系を支えています。
生物多様性
この遺産地域は、外界から隔離された島という環境のため、独自の進化を遂げた多くの固有種が生息・生育する「生物多様性のホットスポット」となっています。マデイラゲッケイジュやマデイラカシなどの植物、マデイラバト(Trocaz pigeon)などの鳥類、そして数多くの昆虫や軟体動物など、ここでしか見られない貴重な種が多数確認されています。