概要
アルコバサ修道院は、ポルトガル中部アルコバサに位置する、国内で最も重要な中世修道院の一つです。1153年に初代ポルトガル国王アフォンソ1世によってシトー会修道院として創建されました。ポルトガルにおける初期ゴシック建築の最も優れた例であり、その簡素ながらも荘厳な美しさと規模において、1989年に世界文化遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
- (i) シトー会建築の理想を体現した傑作であり、その規模、様式の純粋さ、建材の美しさにおいて、普遍的な芸術的価値を持っています。
- (iv) ヨーロッパのシトー会修道院建築の発展において、非常に重要な影響を与えた顕著な例です。
歴史と建築
ムーア人からの国土回復運動(レコンキスタ)の勝利を記念して創建されたこの修道院は、シトー会の厳格な戒律を反映し、華美な装飾を排した簡素で機能的な建築様式が特徴です。全長106メートルに及ぶ壮大な身廊を持つ教会は、その高さと光に満ちた空間で、訪れる者に深い精神的な感銘を与えます。また、修道院の台所には巨大な煙突があり、近くの川から水を引き込んだ水路が床を流れるなど、当時の暮らしを伝える興味深い構造が見られます。
主な見どころ
- 教会:ポルトガルで最初に建てられたゴシック様式の教会で、その荘厳な空間は圧巻です。
- ペドロ1世とイネス・デ・カストロの霊廟:教会の中央には、「死後に再会し、互いを見つめ合えるように」と足側を向き合わせて安置された、ポルトガルで最も有名な悲恋の恋人たちの霊廟があります。精緻な彫刻が施されたこの2つの石棺は、ゴシック彫刻の傑作とされています。
- 沈黙の回廊:14世紀初頭にディニス王によって建設された、静寂と祈りのための空間です。