クスコの市街とは
クスコの市街(City of Cuzco)は、ペルー南東部のアンデス山中に位置する都市です。かつてインカ帝国の首都として栄え、「世界のへそ」を意味する「ケチュア語」で呼ばれていました。15世紀にインカ帝国によって計画的に築かれた都市の基盤の上に、16世紀以降スペイン人が植民都市を建設したため、インカの精巧な石組みとスペイン風の建築が融合した独特の景観を持っています。1983年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
登録基準
- 基準(iii): 現存する、または消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。クスコは、1400年から1534年にかけて南米大陸の広大な地域を支配したインカ文明の中心地であり、その宗教、行政、建築に関する卓越した証拠を今に伝えています。
- 基準(iv): 人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術または科学技術の総合体、あるいは景観の顕著な見本。インカの高度な石組み技術の土台の上にスペイン植民地様式の建築が建てられており、二つの異なる文化が融合・重層した都市景観の顕著な例です。
遺産の価値
クスコの価値は、アメリカ大陸の先住民文明であるインカ文化と、ヨーロッパの植民地文化という二つの異なる文化が、一つの都市空間に共存している点にあります。
- インカの石造技術: 「カミソリの刃一枚通さない」と形容されるインカの精巧な石組みは、地震の多いこの地域で優れた耐震性を発揮しました。スペイン人はインカの建物の土台をそのまま利用して教会や邸宅を建てました。
- 文化の重層: インカの太陽の神殿「コリカンチャ」の上にサント・ドミンゴ教会が建てられるなど、征服と文化の融合の歴史が街の至る所で見られます。これは、ペルーの歴史そのものを象徴する景観です。
概要
地理と歴史
アンデス山脈中の標高約3,400mの盆地に位置します。インカ帝国は、伝説上の初代皇帝マンコ・カパックによってこの地に建国されたと伝えられます。都市は聖なる動物プーマをかたどって設計されたと言われています。
主要な遺跡と建造物
市の中心アルマス広場の周辺には、インカ時代と植民地時代の重要な建造物が数多く残されています。
遺跡・建造物名 | 特徴 |
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サント・ドミンゴ教会/コリカンチャ | インカ帝国で最も重要だった太陽の神殿「コリカンチャ」の土台の上に建てられた教会。インカの石組みとスペイン建築の対比が見事です。 |
サクサイワマン | クスコ市街を見下ろす丘に築かれた巨大な要塞。巨石を精密に組み合わせたインカの石工技術の頂点を示します。 |
アルマス広場 | インカ時代から都市の中心であった広場。カテドラルやラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会など、壮麗な植民地建築に囲まれています。 |
クスコの市街は、インカ文明の栄華と、その後の複雑な歴史を物語る「生きた博物館」として、今も多くの人々を惹きつけています。
参考文献
UNESCO World Heritage Centre. “City of Cuzco”. https://whc.unesco.org/en/list/273