パナマのカリブ海側の要塞群:ポルトベロとサン・ロレンソ
パナマのカリブ海沿岸に築かれたこの要塞群は、1980年に世界文化遺産に登録されました。16世紀から18世紀にかけて、スペインがアメリカ大陸から得た富を本国へ輸送する上で、最も重要な貿易ルートを守るために建設した軍事施設です。しかし、自然環境による劣化や都市開発の圧力により、2012年からは危機遺産リストに記載されています。
世界遺産登録基準
- 登録基準 (i): 人類の創造的才能を表現する傑作。当時のヨーロッパにおける最新の軍事建築技術の優れた例です。
- 登録基準 (iv): ある期間を代表する建築様式、建築技術、科学技術の発展を示す顕著な見本。スペイン植民地時代の防衛建築の進化を示しています。
遺産の概要と価値
この遺産は、主に二つの地域の要塞から構成されます。一つは、かつて南米からの銀の積出港として栄えたポルトベロの港を取り囲む要塞群。もう一つは、パナマ地峡を横断するチャグレス川の河口を守るサン・ロレンソ要塞です。これらの要塞は、フランシス・ドレークやヘンリー・モーガンといった名だたる海賊や、ライバルであったイギリス海軍の攻撃を何度も受け、そのたびに改修・強化が繰り返されました。カリブ海の美しい自然と一体となった要塞群の姿は、大航海時代の富と覇権を巡る激しい攻防の歴史を今に伝えています。
主な構成資産
要塞名 | 特徴 |
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ポルトベロの要塞群 | 港を守るために湾の両岸に築かれた複数の砦や砲台の総称。 |
サン・ロレンソ要塞 | 断崖絶壁の上に築かれた難攻不落の砦。チャグレス川河口を扼する戦略的拠点。 |