歴史都市トレドとは
歴史都市トレドは、スペイン中部のカスティーリャ・ラ・マンチャ州に位置する古都です。古代ローマ時代から2000年以上の歴史を持ち、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三つの文化が共存し、互いに影響を与えながら独自の文化を育んだことから「三文化の都」と称されます。この類いまれな歴史的背景を持つ都市全体が、1986年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
三文化が共存した街
トレドは西ゴート王国の首都、後ウマイヤ朝の重要都市、そしてレコンキスタ後のカスティーリャ王国の首都として、常にイベリア半島の歴史の中心にありました。特に中世には、異なる宗教を信仰する人々が共存し、学問や芸術が花開きました。市内には、壮麗なカテドラル(キリスト教大聖堂)、モスクを改装した教会、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)が隣り合って立ち並び、街の歴史を物語っています。画家エル・グレコが活躍した地としても有名です。
主な見どころ
- トレド大聖堂:スペイン・ゴシック様式の最高傑作と称されるカテドラル。内部はエル・グレコをはじめとする数々の芸術作品で飾られています。
- アルカサル:街で最も高い場所に立つ巨大な要塞。ローマ時代の砦に起源を持ち、現在は軍事博物館となっています。
- サンタ・マリア・ラ・ブランカ教会:元々は12世紀に建てられたシナゴーグ(ユダヤ教会堂)。馬蹄形のアーチが並ぶ内部は、イスラム建築の影響を色濃く受けています。
- サント・トメ教会:エル・グレコの最高傑作『オルガス伯の埋葬』が所蔵されていることで有名です。
- クリスト・デ・ラ・ルス教会:10世紀にモスクとして建てられた、トレドに現存する最古のイスラム建築。後に教会に転用されました。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されています。
- (i) トレドは、その建築物の中に数多くの傑作を含み、都市自体が芸術的偉業です。
- (ii) キリスト教、イスラム教、ユダヤ教という三つの主要な宗教の文化が共存し、互いに影響を与え合った歴史は、他に類を見ない証拠です。
- (iii) 2000年以上にわたる歴史を持つトレドは、西洋文明の様々な側面を具現化した都市遺産の顕著な例です。
- (iv) トレドの建築物は、スペイン建築の発展の各段階を代表するものです。