概要
「クラック・デ・シュヴァリエとカラット・サラーフ・アッディーン」は、シリアに現存する十字軍時代の城塞建築を代表する二つの城です。これらは中東における要塞建築の発展と、キリスト教文化とイスラム教文化の交流を示す最も重要な遺産として、2006年に世界文化遺産に登録されました。しかし、2011年からのシリア内戦により深刻な危機に瀕しており、2013年に危機遺産リストに登録されました。
クラック・デ・シュヴァリエ
「騎士の城」を意味するこの城塞は、11世紀にクルド人によって築かれ、12世紀に聖ヨハネ騎士団によって拡張・強化されました。内壁と外壁からなる二重の城壁や多数の塔を備え、難攻不落を誇りました。保存状態が極めて良好で、ゴシック様式を取り入れた礼拝堂やフレスコ画など、当時の騎士団の生活を伝える遺構が多く残っています。
カラット・サラーフ・アッディーン
「サラーフ・アッディーンの城」としても知られるこの城塞は、古代ローマ時代から要塞があった場所に、10世紀にビザンツ帝国が築いたものです。後にアイユーブ朝の始祖サラーフ・アッディーン(サラディン)が攻略しました。岩山を巧みに利用した防御設計が特徴で、特に深さ28mの巨大な堀切は圧巻です。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されました。
- (ii) 文化交流: 十字軍時代におけるヨーロッパと中東の軍事技術や文化の交流を示す顕著な例です。
- (iv) 建築技術: 中世の軍事建築の最高傑作であり、当時の防衛戦略と建築技術の発展を象徴しています。
| 建造物 | 特徴 |
|---|---|
| クラック・デ・シュヴァリエ | 聖ヨハネ騎士団によって拡張された難攻不落の城。保存状態が非常に良い。 |
| クラック・デ・シュヴァリエの礼拝堂 | 城内に残るゴシック様式の礼拝堂。フレスコ画が見られる。 |
| カラット・サラーフ・アッディーン | 岩山を利用した天然の要害。ビザンツ様式とイスラム様式が混在する。 |
| カラット・サラーフ・アッディーンの堀切 | 岩盤を削って造られた巨大な堀。防御機能の要。 |