サンボー・プレイ・クックの寺院地区と古代イーシャナプラの考古遺跡とは
サンボー・プレイ・クックは、カンボジア中部のコンポン・トム州に位置する、7世紀に栄えた王国チェンラの首都「イーシャナプラ」の遺跡群です。アンコール遺跡群よりも古い時代に建設されたこの遺跡は、クメール建築の黎明期を伝える重要な考古遺跡として、2017年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。森の中にレンガ造りの祠堂(プラサット)が点在しており、その独特の建築様式や精緻な彫刻は、後のアンコール建築の源流となったと考えられています。
登録基準
サンボー・プレイ・クックは、以下の3つの基準を満たしたと評価されています。
- (ii) 建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた。インド文化の影響を受けつつも、独自の「サンボー・プレイ・クック様式」を確立し、後のクメール芸術に大きな影響を与えました。
- (iii) 現存しない文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。アンコール以前に東南アジアで栄えたチェンラ王国の文明を伝える唯一無二の証拠です。
- (vi) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接に、または明白に関連するもの。この遺跡は、ヒンドゥー教の宇宙観を地上に具現化したものであり、その信仰は地域の文化的伝統に深く根付いています。
遺産の価値
この遺跡群の価値は、以下の点にあります。
- 歴史的意義: 強大なクメール王国の前身であるチェンラ王国の首都跡であり、東南アジアの古代史を理解する上で欠かせない存在です。
- 建築的価値: レンガを接着剤なしで積み上げる高度な技術や、砂岩に施された繊細な浮き彫りなど、初期クメール建築の独創的な特徴を示しています。特に八角形の祠堂は、この遺跡群の大きな特徴です。
遺産の概要
地理と気候
遺跡はコンポン・トム州の平原地帯の森の中に位置しています。気候は熱帯モンスーン気候で、雨季と乾季が明確に分かれています。
主要な遺跡と特徴
サンボー・プレイ・クックは、主に3つの寺院グループから構成されています。
- プラサット・サンボー(北寺院群): 最も古いグループで、7世紀前半のイーサンヴァルマン1世によって建設されました。
- プラサット・タオ(中央寺院群): 中心的な寺院群で、壁面に彫られたライオンの彫刻が有名です。
- プラサット・イェイ・ポアン(南寺院群): 7世紀前半に建設された寺院群で、保存状態の良い彫刻が多く残っています。
観光と保全
アンコール遺跡群に比べると訪れる人は少ないですが、静かな森の中で古代の息吹を感じられる魅力的な観光地です。カンボジア政府と国際機関が協力し、地雷除去後の遺跡の修復・保存活動が進められています。
遺跡群名 | 特徴 |
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プラサット・サンボー(北寺院群) | 遺跡内で最も古い寺院群。イーサンヴァルマン1世によって建設された。 |
プラサット・タオ(中央寺院群) | ライオンの彫刻が特徴的な寺院(ライオン寺院)が含まれる。 |
プラサット・イェイ・ポアン(南寺院群) | 美しい彫刻が多く残る寺院群。 |