クンタ・キンテ島と関連遺跡群とは
西アフリカ、ガンビア川の河口から内陸にかけて点在する、大西洋奴隷貿易の歴史を物語る遺跡群です。かつて「ジェームズ島」と呼ばれたクンタ・キンテ島を中心に、要塞、奴隷の収容施設、交易拠点などが含まれます。アフリカから南北アメリカ大陸へ強制的に送られた人々の悲劇を記憶し、二度と繰り返さないための「負の遺産」として、2003年に世界文化遺産に登録されました。
世界遺産としての価値
この遺産は、以下の2つの登録基準を満たしています。
- 登録基準(iii) 文化の証拠: クンタ・キンテ島の要塞跡や、関連する集落の建物は、約400年間にわたるアフリカとヨーロッパの接触、そして奴隷貿易という非人道的なシステムの存在を物語る、動かぬ証拠です。
- 登録基準(vi) 歴史的出来事との関連: この場所は、アレックス・ヘイリーの小説『ルーツ』で世界的に知られるようになりました。小説の主人公クンタ・キンテの故郷とされ、アフリカ系アメリカ人のアイデンティティとルーツ探求の象徴となっています。奴隷貿易の記憶と、それに対する抵抗の精神を伝える、普遍的な意義を持つ場所です。
奴隷貿易の記憶
ガンビア川は、内陸部から奴隷を船積みするための主要なルートでした。ヨーロッパ各国はこの地の支配を巡って争い、クンタ・キンテ島には次々と要塞が築かれました。捕らえられた人々は、劣悪な環境の収容所に押し込められ、ここから「帰らずの扉」を通り、アメリカ大陸へと船で送られていきました。
| 主要な構成資産 | 説明 |
|---|---|
| クンタ・キンテ島(旧ジェームズ島) | ガンビア川に浮かぶ小島。奴隷貿易の拠点となった要塞の遺跡が残る。 |
| アルブレダとジュフレ | 川岸の集落。交易の拠点であり、小説『ルーツ』の舞台として知られる。 |
| サン・ドミンゴのポルトガル人礼拝堂跡 | 初期のヨーロッパ人入植の痕跡を示す。 |
| バラのシックス・ガン・バッテリー | ガンビア川の支配を巡る争いを物語る、イギリスの砲台跡。 |
クンタ・キンテ島と関連遺跡群は、人類が犯した過ちの記憶を風化させず、人権の尊厳と平和の重要性を後世に伝えるための、重要な教育の場となっています。