シャフリサブズの歴史地区とは
ウズベキスタン南部、サマルカンドから南へ約80kmに位置するシャフリサブズは、ティムール朝を建国した英雄ティムールの生誕地として知られる都市です。「緑の都市」を意味するその名の通り、かつては緑豊かなオアシス都市でした。ティムールは故郷であるこの地を壮大な建築物で飾り、帝国の精神的な首都と位置づけました。2000年に世界文化遺産に登録されましたが、近年の過度な開発により、2016年からは危機遺産リストに登録されています。
世界遺産登録基準
- (iii) ティムールとその王朝が築いた14世紀から15世紀にかけての文化や文明を証明する、顕著な物証です。
- (iv) アク・サライ宮殿に代表される建築群は、ティムール朝時代の建築様式と都市計画の頂点を示す傑出した例です。
遺産の価値
ティムール帝国の威光を映す建築
シャフリサブズの遺跡群は、ティムール帝国の絶頂期の権力と富を物語っています。特に、夏の離宮であったアク・サライ宮殿の巨大な門は、現存する部分だけでも高さが約40mあり、その壮大さは見る者を圧倒します。壁面を飾る色鮮やかなタイル装飾は、ティムール朝建築の美しさの象徴です。
ティムールの故郷としての歴史的意義
ティムールはこの地に自身の霊廟を含む壮大な複合施設「ドルッサオダット(権力の座)」を建設させましたが、完成前に亡くなり、サマルカンドに埋葬されました。しかし、彼の息子たちが眠るこの地は、ティムール家にとって特別な場所であり続けました。
主な見どころと危機遺産リスト
最大の見どころは、ティムールが「我が権力と世界の状況を疑う者は、我らが建てた建築物を見よ」と語ったと伝えられるアク・サライ宮殿跡です。その他、ティムールが精神的支柱とした師のために建てたドルティロヴァット建築群(瞑想の家)などがあります。
| 建築物名 | 特徴 |
|---|---|
| アク・サライ宮殿跡 | ティムールが建設した夏の宮殿。巨大な門が残り、壮麗なタイル装飾が見られる。 |
| ドルッサオダット建築群 | ティムールの息子ジャハンギールとウマルの霊廟がある。 |
| コク・グンバズ・モスク | ティムールの孫ウルグ・ベクが建設した金曜モスク。「青いドーム」を意味する。 |
現在、シャフリサブズは危機遺産リストに登録されています。歴史地区内での観光インフラの過度な建設が、遺跡の真正性と完全性を損なうと懸念されているためです。
観光と保全
ティムールの故郷として多くの観光客が訪れますが、保全が喫緊の課題です。ユネスコとウズベキスタン政府は協力し、歴史的景観を損なわない形での都市開発と遺産の保護計画を進めています。