福建土楼とは
福建土楼(ふっけんどろう)は、中国南東部の福建省の山岳地帯に点在する、独特な集合住宅群です。主に12世紀から20世紀にかけて、戦乱を逃れて移住してきた客家(はっか)などの人々によって築かれました。円形や方形の巨大な土壁の建物で、外敵からの防御を目的としつつ、一つの建物に一族が共同で暮らすための工夫が凝らされています。2008年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
世界遺産としての価値
福建土楼は、集団での居住と防衛という社会的要請から生まれた、非常に独創的な建築様式です(登録基準iv)。土、石、木といった現地の材料のみを用い、堅牢かつ快適な居住空間を創り出した伝統技術は高く評価されています。また、土楼での生活は、平等と団結を重んじる氏族社会の文化的伝統を今に伝えています(登録基準iii)。周囲の自然環境と調和しながら、持続可能な生活を営んできた人々の知恵を示す顕著な例でもあります(登録基準v)。
代表的な土楼
世界遺産には、永定県、南靖県、華安県にある46の土楼が含まれています。
- 承啓楼(しょうけいろう):永定県にある「土楼の王」と称される巨大な円形土楼。4つの同心円状の建物からなり、最盛期には80家族以上、600人以上が暮らしていたと言われます。
- 振成楼(しんせいろう):永定県にある「土楼の王子」と呼ばれる美しい円形土楼。伝統的な土楼に西洋建築の要素を取り入れた設計が特徴です。
- 田螺坑土楼群(でんらこうどろうぐん):南靖県にある、四つの円形土楼と一つの方形土楼が配置された景観で知られる土楼群。「四菜一湯(4つの料理と1つのスープ)」の愛称で親しまれています。