ローマ帝国の境界線とは
「ローマ帝国の境界線」は、かつてのローマ帝国の版図の広大さを示す長大な防衛施設群で、1987年以降、段階的に世界文化遺産に登録されてきました。イギリス、ドイツ、オーストリアなど複数の国にまたがるトランスナショナル・サイトであり、城壁、砦、見張り塔、関連施設などから構成されます。帝国の軍事力と土木技術の高さ、そして境界線沿いで行われた文化交流の様子を今に伝えています。
遺産の価値
- 高度な軍事・土木技術: ローマ帝国が築いた防衛戦略と、それを実現した高度な建築・土木技術の証拠です。地形を巧みに利用し、規格化された施設を効率的に建設しました。
- 文化交流の舞台: 境界線は防御の最前線であると同時に、ローマ文化と周辺の諸民族の文化が出会う交易・交流の場でもありました。
主な構成資産
この世界遺産は、ローマ帝国の広大な国境線の一部を構成する以下の資産から成り立っています。
| 構成資産名 | 場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| ハドリアヌスの長城 | イギリス | ローマ皇帝ハドリアヌス帝の命で建設された石造りの長城。イングランド北部に約118kmにわたって延びる。 |
| アントニヌスの長城 | イギリス | ハドリアヌスの長城の北方に築かれた土塁の防壁。スコットランド中部に位置する。 |
| ゲルマニア・スペリオルとラエティアのリーメス | ドイツ | ライン川とドナウ川の上流域に築かれた約550kmの国境防衛線。柵、堀、石壁、見張り塔で構成される。 |
| ドナウ川のリーメス | ドイツ、オーストリア、スロバキア、ハンガリー | ドナウ川沿いに築かれた境界線。川そのものを自然の障壁として利用し、軍団基地や砦が点在する。 |
登録基準
- (ii) ローマ文化が辺境地域に広まり、現地の文化と融合していく過程を示す。
- (iii) ローマ帝国の軍事戦略と辺境政策を物語る、他に類を見ない物証である。
- (iv) 規格化されたローマの軍事建築の発展を示す顕著な見本である。