概要
「アイアンブリッジ峡谷」は、イングランド中部のセヴァーン川沿いに広がる、「産業革命発祥の地」として知られる世界文化遺産です。18世紀、この地は石炭、鉄鉱石、石灰岩などの資源に恵まれ、世界で初めて工業生産が大規模に始まりました。峡谷全体が、技術革新と工業化時代の幕開けを物語る生きた博物館となっています。
産業革命の象徴
アイアンブリッジ峡谷の価値は、2つの画期的な出来事に集約されます。一つは、1709年にアブラハム・ダービー1世が、木炭の代わりにコークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)を使って鉄を溶かす技術を完成させたことです。これにより鉄の大量生産が可能になりました。もう一つは、その孫であるアブラハム・ダービー3世が1779年に建設した、世界初の鋳鉄製アーチ橋「アイアンブリッジ」です。この橋は、鉄という新素材の可能性を世界に示し、産業革命の力強い象徴となりました。
主な構成資産
この遺産は、アイアンブリッジ峡谷博物館群が管理する10の博物館と多くの産業遺構から構成されています。
| 遺跡名 | 特徴 |
|---|---|
| アイアンブリッジと料金所 | 1779年完成。産業革命の象徴であり、土木工学の歴史における金字塔。 |
| コールブルックデール | ダービー家がコークス製鉄法を開発した場所。現存する最古の高炉跡がある。 |
| ブリッツ・ヒル・ヴィクトリアン・タウン | ヴィクトリア朝時代の町並みを再現した野外博物館。当時の生活を体験できる。 |
世界遺産登録基準
- (i) アイアンブリッジは、技術的にも建築的にも画期的な傑作であり、その後の技術発展に大きな影響を与えた。
- (ii) 産業革命の中心地として、その技術、建築、思想は世界中に広まり、多大な影響を及ぼした。
- (iv) 峡谷に残る鉱山、工場、労働者住宅、交通網の跡は、初期産業社会の全体像を示す顕著な見本である。
- (vi) 産業革命の発祥地として、現代社会の形成につながる歴史的に極めて重要な出来事と結びついている。