概要
カディーシャ渓谷(聖なる谷)と神の杉の森(ホルシュ・アルツ・エルラブ)は、レバノン北部の山岳地帯に広がる文化遺産で、1998年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。険しい断崖が続くカディーシャ渓谷は、初期キリスト教時代から多くの修道士が隠遁生活を送った聖地であり、数多くの岩窟修道院や礼拝堂が点在します。また、近隣の神の杉の森には、レバノンの象徴であるレバノン杉の貴重な原生林が残されています。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されています。
- (iii) 世界で最も重要な初期キリスト教の修道士たちの居住地の一つであり、その信仰の伝統を伝える顕著な例である。
- (iv) 渓谷の険しい地形に適応して造られた修道院群は、信仰が作り出した文化的景観の優れた見本である。
文化と自然の価値
カディーシャ渓谷は、古くからマロン派キリスト教徒の中心地として、迫害を逃れた信者たちの避難所となってきました。断崖に掘られた修道院や礼拝堂は、厳しい環境の中で育まれた深い信仰の歴史を物語っています。一方、神の杉の森は、古代エジプトやフェニキアで神殿や船の建材として珍重されたレバノン杉の森を保護する区域です。樹齢1000年を超える巨木も存在し、国の象徴として大切にされています。この遺産は、信仰の歴史と聖なる自然が一体となった独特の景観を特徴としています。
主な見どころ
| 名称 | 特徴 |
|---|---|
| 聖アントニウス・コジャヤ修道院 | カディーシャ渓谷で最も古い修道院の一つで、岩窟礼拝堂やレバノン最古の印刷機を収蔵。 |
| カンヌビーン修道院 | マロン派総主教の座が置かれていた歴史を持つ、渓谷の奥深くに位置する修道院。 |
| 神の杉の森 | ブシャーレ村の背後の山に広がるレバノン杉の保護区。古代からの森の姿を今に伝える。 |