概要
ティルス(現在のスール)は、レバノンの地中海沿岸に位置する古代フェニキアの都市遺跡で、1984年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。紀元前3千年紀に建設され、海洋交易と紫色の染料(ティリアン・パープル)の生産で古代地中海世界の中心地の一つとして栄えました。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されています。
- (iii) 古代において絶大な経済的・文化的影響力を持ったフェニキア文明の繁栄を伝える、類まれな証拠である。
- (vi) ローマ時代の壮大な遺跡群は、ローマ帝国の下での都市の重要性を示しており、歴史上の重要な出来事と密接に関連している。
歴史と考古学的価値
ティルスは、本土の旧市街と沖合の島からなる二重都市でした。特に紫染料の生産は都市に莫大な富をもたらし、その名は古代世界に広く知れ渡りました。アレクサンドロス大王による難攻不落の島への包囲攻撃は、古代史における有名な出来事です。その後ローマ時代にも主要都市として繁栄し、凱旋門、共同浴場、巨大な競技場(ヒッポドローム)などの壮大な公共建築物が建設されました。これらの遺跡は、ティルスの長い歴史と文化的繁栄を今に伝えています。
主な遺跡
| 遺跡名 | 特徴 |
|---|---|
| アル・バス遺跡 | ローマ時代のネクロポリス(共同墓地)、巨大な凱旋門、全長480mの競技場跡が残る。 |
| アル・ミナ遺跡 | ローマ・ビザンティン時代の列柱道路、公衆浴場、劇場など、都市の中心部の遺跡が広がる。 |
| 古代の港湾施設 | フェニキア時代に海洋交易の中心であった港の跡。 |