クイーンズランドの湿潤熱帯地域とは
クイーンズランドの湿潤熱帯地域は、オーストラリア北東部の海岸沿いに広がる約8,940平方キロメートルの熱帯雨林地帯で、1988年に世界自然遺産に登録されました。1億年以上前から存在するとされる世界最古の熱帯雨林の一つであり、植物の進化の歴史を解き明かす「生きた博物館」としての価値を持っています。ディンツリー国立公園などがこの地域に含まれます。
世界遺産としての価値
グレート・バリア・リーフ同様、4つすべての自然遺産登録基準を満たしています。
- 登録基準 (vii): 険しい山々、深い渓谷、急流、そして壮大な滝が織りなす、海岸から高原まで変化に富んだ優れた自然景観を有します。
- 登録基準 (viii): 超大陸ゴンドワナ時代にまでさかのぼる地球の進化の歴史を記録しており、特に原始的な被子植物(花を咲かせる植物)の多様性が際立っています。
- 登録基準 (ix): 有袋類の進化など、動植物の進化における重要な生態学的・生物学的プロセスが現在も進行している顕著な見本です。
- 登録基準 (x): オーストラリアの全動植物種の多くが生息しており、特に固有種や希少種の割合が非常に高く、生物多様性の保全上きわめて重要です。
古代から続く生命の記録
この地域の熱帯雨林は、地球上の被子植物の進化の初期段階を示す、原始的な分類群が世界で最も集中している場所です。ここには、現存する被子植物の科のうち、最も原始的な19科のうち13科が見られます。動物では、恐竜の時代から生き残ってきたとされる飛べない鳥「ヒクイドリ」や、樹上で生活する「キノボリカンガルー」など、ユニークな固有種が多く生息しています。また、この森は数万年にわたりアボリジニの人々の生活と文化を支えてきた重要な場所でもあります。
観光と保全
ケアンズを拠点に、ガイド付きウォーク、リバークルーズ、ロープウェイなど、多様な方法で太古の森を体験することができます。観光は地域経済に貢献する一方で、外来種の侵入や開発による生息地の分断が懸念されています。そのため、遊歩道を整備して人の立ち入りを制限するなど、環境への影響を最小限に抑えるための管理が行われています。
分類 | 代表的な種 |
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動物 | ヒクイドリ、ラムホルツキノボリカンガルー、カモノハシ |
植物 | イディオスペルマム(リボンウッド)、キングファーン、ファンパーム |