西ガーツ山脈とは
西ガーツ山脈は、インド半島の西海岸に沿って約1,600kmにわたり連なる長大な山脈です。ヒマラヤ山脈よりも古く、ゴンドワナ大陸の分裂といった地球の地質学的歴史を物語る重要な地形です。この山脈は、インドのモンスーン気候に決定的な影響を与えるとともに、非常に豊かな生物多様性を育んでいることから、「生物多様性ホットスポット」の一つとされています。その価値が認められ、山脈内にある39の国立公園や保護区などが、2012年にユネスコの世界自然遺産としてシリアル・ノミネーション(連続性のある資産)として登録されました。
世界遺産登録基準
(ix) 生態系の顕著な見本: インド洋からの湿った季節風を遮ることで独特の気候を生み出しており、熱帯地域の生態学的プロセスを理解する上で極めて重要な場所です。
(x) 生物多様性の保全: 全球的に見ても絶滅の危機にある多数の動植物が生息しており、特に固有種の割合が非常に高いことから、生物多様性の保全上、世界的に重要な価値を持っています。生物多様性の宝庫
西ガーツ山脈は、標高や降水量の違いから、熱帯雨林、山地林、草原など多様な植生が見られます。この多様な環境が、数多くの固有種を含む動植物を育んでいます。
- ライオンオザル: 顔の周りのたてがみがライオンに似ている、西ガーツ山脈の固有種。
- ニルギリタール: 断崖絶壁に生息するヤギの仲間。
- マラバルオオトカゲ
- その他、ベンガルトラ、アジアゾウ、ガウル(インドヤギュウ)など多数の大型哺乳類も生息。
インドの気候を支える役割
西ガーツ山脈は、夏にインド洋から吹く湿ったモンスーンを遮る「壁」の役割を果たします。これにより山脈の西側には大量の雨が降り、インドの農業や生活に不可欠な多くの河川の水源となっています。この山脈なくして、インドの気候や水循環を語ることはできません。