ヴァトナヨークトル国立公園 – 火と氷の絶えず変化する自然とは
ヴァトナヨークトル国立公園は、アイスランドの国土の約14%を占める広大な国立公園で、2019年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。その名の通り、ヨーロッパ最大の氷河であるヴァトナヨークトルと、その下に広がる活発な火山活動が織りなす「火と氷の相互作用」が特徴です。地球の地質学的な力をダイナミックに体感できる場所として、世界的に重要な価値を持っています。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたことが評価されました。
- 登録基準(viii):生命の歴史や地球の重要な地質学的過程を示す顕著な見本。氷河と火山の相互作用によって生まれる多様な地形(氷底火山、氷河湖決壊洪水など)は、地球の地質史を理解する上で極めて重要です。
遺産の価値
この国立公園の価値は、現在進行形で見られる地球のダイナミックな活動と、それによって生み出される壮大で多様な自然景観にあります。
- 地質学的価値:氷河の下で火山が噴火する「氷底噴火」や、その熱で溶けた氷河の水が巨大な洪水を引き起こす「ヨークルフロイプ(氷河湖決壊洪水)」など、特異な地質現象を観察できる世界でも稀な場所です。
- 多様な自然景観:広大な氷原、活火山、溶岩台地、氷河によって削られた谷、氷の洞窟(アイスケーブ)、巨大な滝など、変化に富んだ景観が広がっています。
遺産の概要
公園は2008年に設立され、その後周辺地域を統合して現在の広さとなりました。アイスランド南東部を中心に、中央高原地帯にまで及んでいます。公園内にはアイスランド最高峰のクヴァンナダルスフニュークル山(2,110m)も含まれます。
| 主要な地形・現象 | 特徴 |
|---|---|
| ヴァトナヨークトル氷河 | ヨーロッパ最大の氷帽氷河。厚さは最大で約1,000mに達する。 |
| グリムスヴォトン火山 | 氷河の下にあり、アイスランドで最も活動的な火山の一つ。頻繁に氷底噴火を起こす。 |
| ヨークルスアゥルロゥン氷河湖 | 氷河から分離した氷山が浮かぶ美しい湖。人気の観光地。 |
ヴァトナヨークトル国立公園は、地球が生きていることを実感させる壮大な自然の実験室であり、その保護は地球科学の発展にとって不可欠です。
参考文献
- UNESCO World Heritage Centre. “Vatnajökull National Park – Dynamic Nature of Fire and Ice”. https://whc.unesco.org/en/list/1604