フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群とは
「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」は、20世紀を代表する建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)が設計したアメリカ国内に点在する8つの建築物からなる世界文化遺産です。2019年に登録され、彼の設計思想である「有機的建築」を体現し、近代建築の発展に多大な影響を与えた作品群として評価されています。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたことが評価されました。
- 登録基準(ii):建築や技術、記念碑、都市計画、景観デザインの発展において、ある期間または文化圏における価値観の重要な交流を示すもの。ライトの「有機的建築」は、オープンプランの導入、内外空間の連続性、鉄やコンクリートといった新素材の活用などを通じて、ヨーロッパの近代建築運動にも影響を与えました。
遺産の価値
この遺産群の価値は、ライトの革新的な建築思想と、それが具現化された多様な作品群にあります。
- 有機的建築(Organic Architecture):建物がその場所の自然環境と一体となり、あたかもそこから生まれ育ったかのようにデザインされるべきだという思想です。落水荘のように自然と完全に融合した建築や、プレーリー・スタイル(草原様式)のように周囲の景観に呼応したデザインがその代表例です。
- 建築界への影響:彼の作品は、従来の閉鎖的な箱型の空間を解放し、流動的でオープンな空間を創造しました。この考え方は、その後の住宅や公共建築のデザインに世界的な影響を及ぼし続けています。
遺産の概要
遺産は、ライトの50年以上にわたるキャリアの中から、彼の設計理念の進化を示す代表的な8件の作品で構成されています。初期のプレーリー・スタイルから後期の独創的なデザインまで、その多様な作風を網羅しています。
| 主要な構成資産 | 所在地 | 特徴 |
|---|---|---|
| ユニティ・テンプル | イリノイ州 | コンクリートを大胆に使用した初期の公共建築。 |
| ロビー邸 | イリノイ州 | 水平線を強調したプレーリー・スタイルの代表作。 |
| タリアセン | ウィスコンシン州 | ライト自身の自邸兼スタジオ。自然と一体化した設計。 |
| 落水荘(フォーリングウォーター) | ペンシルベニア州 | 滝の上に建てられた、有機的建築の最高傑作。 |
| ジェイコブズ邸 | ウィスコンシン州 | 低コストで機能的な「ユーソニアン住宅」の最初の実例。 |
| ソロモン・R・グッゲンハイム美術館 | ニューヨーク州 | 螺旋状のユニークな構造を持つ、ライト晩年の代表作。 |
これらの作品群は、一人の建築家が20世紀の建築と社会に与えた計り知れない影響を物語っています。
参考文献
- UNESCO World Heritage Centre. “The 20th-Century Architecture of Frank Lloyd Wright”. https://whc.unesco.org/en/list/1496