シャーク湾とは
シャーク湾は、オーストラリア大陸最西端に位置する広大な湾で、1991年に世界自然遺産に登録されました。この遺産地の最大の特徴は、①地球最古の生命の痕跡である「ストロマトライト」、②世界最大級の「海草藻場(シーグラスベッド)」、③そこに生息する絶滅危惧種「ジュゴン」の世界最大の個体群という、3つの世界的にも稀な自然現象が共存している点にあります。
世界遺産としての価値
4つすべての自然遺産登録基準を満たしている、世界でも数少ない遺産の一つです。
- 登録基準 (vii): 白い砂浜、赤い砂丘、そして青い海が織りなす色彩のコントラストが美しい景観を生み出しています。
- 登録基準 (viii): ハメリンプールに現存するストロマトライトは、約35億年前に出現した地球最古の生命体シアノバクテリアの活動によって形成されたもので、地球の生命の進化史を示す顕著な見本です。
- 登録基準 (ix): 湾内の高い塩分濃度や広大な海草藻場が、独自の生態学的プロセスを育んでいます。
- 登録基準 (x): 約1万頭のジュゴンをはじめ、バンドウイルカ、ウミガメ、ザトウクジラなど、多くの海洋生物にとって重要な生息地となっています。
太古の海と現代の生態系
シャーク湾のハメリンプールは、湾の入り口が狭く水の蒸発が激しいため、海水中の塩分濃度が通常の約2倍あります。この高塩分環境が、ストロマトライトを捕食する生物の侵入を妨げ、太古の地球と同じような環境でストロマトライトが現在も形成され続ける理由となっています。また、湾の4,800平方キロメートルを覆う広大な海草藻場は、大量の二酸化炭素を吸収するだけでなく、ジュゴンの主要な餌場となり、多くの海洋生物の繁殖場所として、湾全体の生態系を支える基盤となっています。モンキーマイアでは、野生のバンドウイルカに餌付けをする光景が有名です。
観光と保全
デナムやモンキーマイアを拠点に、ドルフィンウォッチングやクルーズ、ストロマトライトの観察などが楽しめます。観光客の増加がデリケートな生態系に与える影響を最小限に抑えるため、ボートの航行区域や速度、イルカとのふれあい方など、厳格なルールが定められています。
| 自然の要素 | 概要 |
|---|---|
| ストロマトライト | シアノバクテリアによって形成される層状の岩石構造物。地球初期の生命の姿を今に伝える。 |
| 海草藻場 | 世界最大級の規模を誇り、湾の生態系の基盤をなす。ジュゴンの主要な餌場。 |
| ジュゴン | 世界最大の個体群(約1万頭)が生息。海草を主食とする草食性の海洋哺乳類。 |