概要
ゼメリング鉄道は、オーストリアのグロッグニッツとミュルツツーシュラークの間、ゼメリング峠を越える約41kmの鉄道路線です。1854年に開通した世界初の本格的な山岳鉄道であり、その卓越した技術と自然景観との調和が評価され、1998年に鉄道として初めてユネスコの世界文化遺産に登録されました。建設当時は不可能とされた険しいアルプスの地形を、革新的な土木技術で克服した、19世紀の鉄道工学を象徴する記念碑的な遺産です。
世界遺産登録基準
- (ii) ゼメリング鉄道は、鉄道建設の初期における偉大な技術的課題に対する優れた解決策であり、その後の鉄道建設に多大な影響を与えました。
- (iv) 鉄道建設が自然景観と調和して行われた優れた例であり、その結果、壮観で美しい旅行体験が生み出されました。
技術的特徴と景観
ゼメリング鉄道は、厳しい自然環境を克服するために建設された多くの建造物自体が見どころとなっています。
- 高架橋(Viaducts): 路線には16の高架橋があり、その多くは石造りの美しいアーチ橋です。特に「カルテ・リンネ橋」は2層構造で、ゼメリング鉄道を象徴する景観の一つです。
- トンネル(Tunnels): 標高差を克服するため、全長1,431mの頂上トンネルを含む15のトンネルが掘削されました。これは当時最先端の技術でした。
- 景観との調和: 路線はアルプスの豊かな自然の中を縫うように走ります。車窓からは、高架橋やトンネルが森や谷と一体となった美しい風景を楽しむことができます。
- 歴史的駅舎: 沿線には、建設当時の姿を留める趣のある駅舎が点在しており、鉄道の歴史を感じさせます。