概要
「オアハカの中部渓谷にあるヤグルとミトラの先史洞窟」は、メキシコ南部のオアハカ州にある世界文化遺産です。この地域にあるギラ・ナキツ洞窟などの遺跡群からは、約1万年前にさかのぼる植物栽培の痕跡が発見されており、アメリカ大陸における農耕の起源を解明する上で極めて重要な証拠を提供しています。狩猟採集生活から農耕定住社会へと移行する人類史の重要な転換点を示す文化的景観として、2010年に登録されました。
農耕の起源を示す考古学的景観
この遺産は、複数の先史時代の洞窟住居跡と、サボテンなどが自生する半乾燥地帯の自然景観から構成されています。特にギラ・ナキツ洞窟からは、カボチャやインゲンマメの栽培種としては世界最古級の種子や、トウモロコシの祖先とされる野生植物テオシンテの穂軸などが見つかっています。これらの発見は、人類が野生植物を栽培化していく過程を具体的に示すものであり、メソアメリカ文明の基盤となった農耕社会の始まりを物語る貴重な考古学的証拠です。
| 主要な遺跡 | 特徴 |
|---|---|
| ギラ・ナキツ洞窟 | 約1万年前の栽培されたカボチャの種子が発見されたことで知られる。 |
| ヤグル遺跡 | 洞窟住居のほか、後に発展したサポテカ文化の建造物群も含む。 |
| ミトラ遺跡 | 幾何学的な石のモザイク装飾で有名なサポテカ・ミシュテカ文化の祭祀センター。 |
世界遺産登録基準
- (iii) アメリカ大陸における狩猟採集社会から農耕社会への移行という、人類の社会経済的発展の転換点を証明する、類い稀な証拠を内包している。