概要
この世界遺産は、イタリア南部カンパニア州に広がる「チレントおよびディアノ渓谷国立公園」内に点在する、3つの異なる時代の文化遺産群を対象としています。古代ギリシャの植民都市であった「ペーストゥム」と「ヴェーリア」の考古遺跡群、そして壮大なバロック建築である「パドゥーラのカルトゥジオ修道院」が含まれます。地中海の豊かな自然景観の中に、古代から中世、近世に至るまでの人類の歴史が刻まれた複合的な遺産です。
歴史
紀元前7世紀頃から、この地域は「マグナ・グラエキア(大ギリシャ)」と呼ばれる古代ギリシャ人の植民地として栄えました。ペーストゥム(ギリシャ名:ポセイドニア)は、壮麗な神殿を誇る都市として、ヴェーリア(ギリシャ名:エレア)は、パルメニデスなどを輩出した哲学の一大中心地として発展しました。ローマ時代を経て、中世以降はこの地域にキリスト教文化が根付き、14世紀には南イタリア最大級の修道院であるパドゥーラのカルトゥジオ修道院が建設されました。
主な構成資産
- ペーストゥムの考古遺跡: 紀元前6世紀から5世紀にかけて建設された、3つの巨大なドーリア式神殿がほぼ完全な形で残っています。ヘラ神殿やネプチューン神殿(実際はアポロン神殿)など、その保存状態の良さはギリシャ本土の神殿にも匹敵します。
- ヴェーリアの考古遺跡: 哲学者パルメニデスが創始したエレア派哲学の発祥地。古代の都市城壁や、「ポルタ・ロゼア」と呼ばれるアーチ門などが残っています。
- パドゥーラのカルトゥジオ修道院: 1306年に創建されたカルトゥジオ会の修道院。南イタリア最大級のバロック建築として知られ、広大な回廊や豪華な装飾が施された教会が見どころです。
世界遺産登録と登録基準
古代ギリシャ・ローマ時代から中世に至るまでの地中海地域の文化交流と歴史的変遷を物語る貴重な証拠として、1998年に世界文化遺産に登録されました。登録基準は以下の通りです。
- (iii) 古代ギリシャの植民都市と、それに続く時代の文明を伝える他に類を見ない証拠。特にペーストゥムとヴェーリアは、古代地中海世界の重要な文化中心地であった。
- (iv) 人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式の顕著な見本。ペーストゥムの神殿群とパドゥーラの修道院は、それぞれ古代ギリシャ建築とバロック建築の傑作である。
| 構成資産 | 特徴 |
|---|---|
| ペーストゥムの考古遺跡 | 保存状態が極めて良好な3つの古代ギリシャ神殿群 |
| ヴェーリアの考古遺跡 | エレア派哲学の発祥地として知られる古代ギリシャの都市遺跡 |
| パドゥーラのカルトゥジオ修道院 | 南イタリア最大級の壮麗なバロック様式の修道院 |