モスタル旧市街の古橋地区とは
ボスニア・ヘルツェゴビナ南部、ネレトヴァ川の渓谷に広がる歴史的な都市です。その名の通り、16世紀にオスマン帝国によって架けられた優美な石造りのアーチ橋「スタリ・モスト(古い橋)」で世界的に知られています。橋の周辺には、オスマン帝国時代のイスラム建築と、オーストリア・ハンガリー帝国時代の影響を受けた西欧風の建築が混在し、東西文明の接点としての歴史を物語っています。
世界遺産登録の概要
2005年に「モスタル旧市街の古橋地区」として世界文化遺産に登録されました。
- 登録基準(vi):歴史上の重要な出来事、思想、信仰などと直接関連する遺産である点。多文化・多民族・多宗教が長年にわたり共存してきた稀有な都市であり、ボスニア紛争で破壊された橋が国際協力で再建されたことは、和解と人間の連帯を象徴する出来事として評価されました。
遺産の価値と特徴
この遺産の中心は、オスマン建築の傑作とされた「スタリ・モスト」です。しかし、この橋は1993年のボスニア紛争で破壊され、その姿を失いました。紛争後、国際的な支援のもと、オスマン帝国時代の技術を用いて2004年に忠実に再建されました。そのため、現在の橋と旧市街は、単なる歴史的景観だけでなく、紛争による破壊の悲劇と、文化遺産の復興を通じた和解の象ENT_242_1象徴という、力強いメッセージを持っています。夏には、再建された橋から若者が川に飛び込む伝統行事も復活し、街に活気を取り戻しています。
主な見どころ
スタリ・モストを中心に、歴史的な建造物が点在しています。
| 見どころ | 特徴 |
|---|---|
| スタリ・モスト(古い橋) | 16世紀のオスマン建築の傑作。紛争で破壊された後、2004年に再建された。 |
| コスキ・メフメド・パシャ・モスク | 17世紀初頭のモスク。ミナレット(尖塔)から旧市街を一望できる。 |
| ビシュチェヴィチャ邸 | オスマン帝国時代の裕福な商人の暮らしを伝える伝統的な家屋。 |
| 古橋博物館 | スタリ・モストの歴史や破壊、再建の過程を展示している。 |
参考文献
「モスタル旧市街の古橋地区」UNESCO. https://whc.unesco.org/ja/list/946