オカバンゴ・デルタとは
アフリカ南部のボツワナ北部に広がる、世界最大級の内陸デルタです。アンゴラ高原に源を発するオカバンゴ川が、カラハリ砂漠の盆地に流れ込み、海に到達することなく蒸発・浸透することで形成されます。年に一度の増水期には、広大な範囲が湿地となり、乾燥した大地に生命の楽園を創り出します。このダイナミックな水循環が、非常に豊かな生物多様性を育んでいます。
世界遺産登録の概要
2014年に世界自然遺産に登録されました。ボツワナ初の世界遺産です。
- 登録基準(vii):ひときわ優れた自然美、美的価値を有する現象、または地域である点。澄んだ水が網の目のように広がる水路、緑豊かな島々、そして多種多様な野生動物が織りなす景観は、他に類を見ない美しさです。
- 登録基準(ix):陸上・淡水域生態系の進化や発展において、重要な進行中のプロセスを代表する顕著な見本である点。季節的な洪水という水文学的プロセスが、生命のサイクルを支配する独特の生態系を形成しています。
- 登録基準(x):生物多様性の保全上、最も重要かつ意義深い自然生息地である点。アフリカゾウの最大の個体群をはじめ、絶滅危惧種であるチーターやリカオンなど、多くの大型哺乳類の生息地として極めて重要です。
遺産の価値と特徴
オカバンゴ・デルタの価値は、砂漠の中に存在する巨大なオアシスという、特異な自然環境にあります。季節的な洪水によってもたらされる水と栄養分が、多種多様な動植物の生命を支えています。ここには、アフリカゾウ、カバ、ライオン、ヒョウといった大型哺乳類や、数百種にのぼる鳥類が生息しています。「モコロ」と呼ばれる丸木舟に乗って水路を進むと、パピルスが茂る湿地や、スイレンが咲くラグーンなど、変化に富んだ美しい景観と出会うことができます。
主な生態系ゾーン
デルタは、水の量によって異なる環境に分かれています。
| 生態系ゾーン | 特徴 | 代表的な動植物 |
|---|---|---|
| 恒久湿地 | 年間を通じて水に覆われているデルタの中心部。水路やラグーンが広がる。 | カバ、ワニ、魚類、カワウソ、サンショクウミワシ |
| 季節湿地 | 年に一度の洪水期に水没する氾濫原。 | リーチュエ(半水生のアンテロープ)、アフリカスイギュウ |
| 乾燥地・島嶼部 | 洪水でも水没しない島のエリア。森林やサバンナが広がる。 | アフリカゾウ、ライオン、キリン、シマウマ、リカオン |
参考文献
「オカバンゴ・デルタ」UNESCO. https://whc.unesco.org/ja/list/1432