概要
ノール=パ・ド・カレー地方の炭田地帯は、フランス北部に約120kmにわたって広がる産業遺産です。18世紀から20世紀後半までの約300年間にわたり、フランスの石炭産業の中心地として栄えました。この遺産は、採掘施設だけでなく、ぼた山(ズリ山)、鉄道、労働者のための住宅や学校、教会など、炭鉱業に関わるあらゆる要素が一体となった文化的景観を形成しています。これは、ヨーロッパの産業史における労働者の生活と文化を物語る貴重な証拠です。
産業景観の特徴
この炭田地帯は、単なる工場の跡地ではなく、社会全体を形成した景観として価値があります。
| 構成要素 | 特徴 |
|---|---|
| 鉱山施設 | 坑口やぐら、選炭工場、発電所など、石炭採掘から輸送までの一連の施設群が残されている。 |
| ぼた山 | 採掘で出た岩石を積み上げた人工の山。現在は緑化され、地域のシンボルとなっているものもある。 |
| 炭鉱都市(シテ) | 鉱山会社が労働者のために建設した計画的な住宅地。独自のコミュニティと文化が育まれた。 |
世界遺産登録
2012年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。登録にあたっては、以下の基準が評価されました。
- 登録基準 (ii): 3世紀にわたる産業技術や都市計画の発展を示し、ヨーロッパの産業モデルの交流を証明するものであること。
- 登録基準 (iv): 炭鉱業に特化した産業景観と建築群が、歴史の重要な時代を示す顕著な見本であること。
- 登録基準 (vi): 労働運動の発展や、移民労働者たちが育んだ連帯の文化など、産業社会の記憶と結びついた無形の伝統を持つこと。