ジャームのミナレットと考古遺跡群とは
ジャームのミナレットと考古遺跡群は、アフガニスタン西部の山岳地帯に位置する世界文化遺産です。2002年に登録されると同時に、紛争や自然災害による脅威から「危機にさらされている世界遺産(危機遺産)」にもリストアップされました。
この遺産の中心であるミナレットは、12世紀後半にゴール朝によって建設された高さ約65メートルの壮麗な塔です。焼成煉瓦で作られた表面には、クーフィー体のアラビア文字によるコーランの一節や、精緻な幾何学模様、植物模様が施されており、イスラム建築の傑作とされています。周辺には、ゴール朝のかつての首都の遺跡とされる考古遺跡が点在しており、当時の文明の繁栄を今に伝えています。
世界遺産としての価値
ジャームのミナレットと考古遺跡群は、12世紀から13世紀にかけて中央アジアで栄えたゴール朝の文明を証明する類まれな遺産として、その普遍的価値が認められています。
登録基準
- (ii) 文化の交流を示すもの: その革新的な建築様式と装飾は、インド亜大陸をはじめとする周辺地域の芸術や建築の発展に大きな影響を与えました。
 - (iii) ある文化の伝統や文明の存在を伝えるもの: ゴール朝の権力と文化水準の高さを証明する、現存する唯一無二の証拠です。
 - (iv) 歴史上の重要な段階を物語る建築様式などの顕著な例: この地域におけるイスラム建築と装飾の優れた例であり、その後の発展にも寄与しました。
 
危機遺産としての現状と課題
この遺産は、登録当初から危機遺産リストに記載されています。その主な理由として、長年の紛争による管理体制の脆弱化、盗掘の横行、そしてジャーム川とハリ川の合流地点という立地による浸食や洪水といった自然災害の脅威が挙げられます。
特にミナレットは川の浸食により傾斜が進行しており、倒壊の危険性が指摘されています。国際的な支援のもとで保存修復活動が進められていますが、アフガニスタンの政情不安により活動は困難を極めています。この貴重な人類の遺産を未来へ継承するためには、継続的な保護と国際社会の協力が不可欠です。
基本情報
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 登録名 | ジャームのミナレットと考古遺跡群 | 
| 所在地 | アフガニスタン・イスラム共和国 ゴール州 | 
| 登録年 | 2002年 | 
| 遺産種別 | 文化遺産 | 
| 登録基準 | (ii), (iii), (iv) | 
| 危機遺産 | 2002年 – 現在 | 
より詳しい情報については、ユネスコ世界遺産センターの公式サイトをご参照ください。
Minaret and Archaeological Remains of Jam – UNESCO World Heritage Centre