始皇帝陵と兵馬俑坑とは
始皇帝陵と兵馬俑坑は、中国史上初の皇帝である秦の始皇帝の巨大な陵墓と、その陵墓を守るために埋葬された陶製の軍団です。陝西省西安市に位置し、1987年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。数千体にも及ぶ兵士や馬の俑(人形)が整然と並ぶ光景は圧巻で、20世紀最大の考古学的発見の一つと称されています。
世界遺産としての価値
この遺産は、古代中国の芸術と技術の頂点を示す「人類の創造的才能の傑作」です(登録基準i)。兵馬俑は、一体一体が異なる顔立ちや表情、髪型をしており、その驚異的な写実性は他に類を見ません。これらは、始皇帝が死後の世界でも自らの帝国を統治し続けようとした、壮大な思想の物的な証拠といえます。
また、始皇帝陵の構造や兵馬俑の配置は、秦王朝の社会制度、軍事組織、そして当時の葬送儀礼を解明する上で非常に貴重な資料であり、失われた文明の伝統を伝える顕著な見本と評価されています(登録基準iii, iv, vi)。
主な構成資産
兵馬俑は、主に3つの俑坑から発見されています。
- 兵馬俑坑1号坑:最も規模が大きく、約6000体の歩兵と戦車が発掘された長方形の軍陣。軍団の主力を表していると考えられています。
- 兵馬俑坑2号坑:騎兵、弩兵、戦車兵など多兵種が混在する、より複雑な編成の部隊。機動部隊とみられています。
- 兵馬俑坑3号坑:規模は小さいものの、司令官や幕僚の俑が発見されたことから、軍団の司令部にあたると推測されています。