概要
「キージ島の木造教会と集落」は、ロシア北西部カレリア共和国のオネガ湖に浮かぶキージ島にある木造建築群です。1990年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この遺産は、釘を一切使わずに建てられた精巧な木造教会を中心に、ロシア北方の伝統的な木造建築技術の最高傑作とされています。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されました。
- (i) 特に22個のタマネギ型ドームを持つプレオブラジェンスカヤ教会は、その独創的なデザインと技術的な完成度において、人類の創造的才能を示す傑作である点。
- (iv) 釘を使わない「組木技術」など、ロシア北方の伝統的な木造建築技術の発展の頂点を示す顕著な例である点。
- (v) 周辺の自然環境と調和した集落の景観が、伝統的な土地利用と人と自然の相互作用を示す優れた見本である点。
主な建造物と木造建築技術
キージ島の建築群は「キージ・ポゴスト」と呼ばれ、2つの教会と鐘楼で構成されています。これらの建物は、斧などの伝統的な道具のみで建てられ、釘を一本も使用していないのが最大の特徴です。
| 建築物名 | 特徴 |
|---|---|
| プレオブラジェンスカヤ教会(主の顕栄聖堂) | 1714年建立。大小22個のタマネギ型ドームが重なり合う、世界でも類を見ない木造教会。内部には豪華なイコノスタシス(聖障)がある。 |
| ポクロフスカヤ教会(生神女庇護聖堂) | 1764年建立。9つのドームを持つ冬用の教会。プレオブラジェンスカヤ教会と対をなし、優美な姿を見せる。 |
| 鐘楼 | 1862年に再建。ポゴストの中心に位置し、2つの教会と調和した景観を作り出している。 |
歴史的背景
キージ島のあるオネガ湖周辺は、古くからロシア北方の宗教と文化の中心地でした。キージ・ポゴストは、18世紀に地域の教区の中心として建設され、周辺集落の信仰を集めました。厳しい自然環境の中で育まれた木造建築技術は、世代から世代へと受け継がれ、この比類なき美しい建築群を生み出しました。現在、島全体が野外博物館として保存され、ロシアの伝統文化を後世に伝えています。