概要
ホラショヴィツェは、チェコ南部、南ボヘミア地方に残る伝統的な村落です。中央ヨーロッパの村の構造と建築様式を中世からほぼ完全な形で保存している貴重な例として、1998年に世界文化遺産に登録されました。特に18世紀から19世紀にかけて建てられた「南ボヘミアの民俗バロック」様式の家々が、美しい景観を形成しています。
南ボヘミアの民俗バロック
ホラショヴィツェの建築様式は、専門の建築家ではなく、地元の農民たちが自らの手で築き上げたものです。都市の豪華なバロック建築に影響を受けつつ、それを漆喰(スタッコ)を用いて農家の切妻壁に模倣したもので、素朴ながらも独創的な装飾が特徴です。22の家屋が村の中心にある広場を囲むように配置されており、統一感のある美しい村並みを見せています。
保存の歴史
この村の景観が奇跡的に保存された背景には、特異な歴史があります。第二次世界大戦後、この地に住んでいたドイツ系住民が追放され、村は一時的にほぼ無人となりました。このため、近代化の波にさらされることなく、19世紀当時の姿が手付かずのまま残されることになったのです。その後、保存の価値が見出され、修復・再生プロジェクトを経て現在の姿を取り戻しました。
世界遺産登録基準
- (ii) ホラショヴィツェは、中央ヨーロッパにおける伝統的な農村集落の建設と景観を、長期間にわたり非常に良好な状態で保存し、示している。
- (iv) 「南ボヘミアの民俗バロック」として知られる18世紀から19世紀の土着の建築様式が、その土地の共同体によって維持され、集落の景観として顕著な形で現れている。
参考文献
- UNESCO World Heritage Centre. “Holašovice Historic Village”. https://whc.unesco.org/en/list/861