ベラトとギロカストラの歴史地区とは
ベラトとギロカストラは、アルバニア南部に位置する二つの歴史的な都市です。まず2005年にギロカストラがユネスコの世界文化遺産に登録され、その後2008年にベラトが加わり範囲が拡張されました。これらの都市は、オスマン帝国時代における多様な宗教・文化の共存を示す、典型的な建築様式と独特な都市景観を持つことから、その歴史的価値が高く評価されています。
ベラトは「千の窓の町」として知られ、丘の斜面に並ぶ白い家々の多くの窓が特徴的です。一方、ギロカストラは「石の町」と呼ばれ、石灰岩で覆われた屋根を持つ石造りの塔のような家(クル)が特徴です。どちらの都市も、その美しい景観と歴史的な建造物が訪れる人々を魅了しています。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の登録基準を満たしたと評価されています。
- 登録基準 (iii): オスマン帝国時代に栄えた、職人や商人たちの伝統的な生活様式を伝える顕著な物証です。17世紀から19世紀にかけて、両都市の伝統的な家屋や公共建築物は、当時のバルカン半島の生活文化を色濃く残しています。
- 登録基準 (iv): オスマン帝国時代後期のバルカン半島における、要塞化された都市の建築様式(特に「クル」と呼ばれる塔状家屋)の顕著な例です。ベラトとギロカストラの都市景観は、様々な文化の影響を受けながら独自の発展を遂げた建築技術を示しています。
遺産の価値
歴史的価値
両都市は、古代イリュリア人、ギリシャ人、ローマ人、ビザンティン帝国、そしてオスマン帝国といった多様な文明の影響を受けてきました。特にオスマン帝国時代の文化と建築様式を良好な状態で保存しており、イスラム教とキリスト教の文化が共存してきた歴史を今に伝えています。
建築的価値
ベラトとギロカストラには、多くの伝統的な家屋や公共建築物が現存し、それぞれが異なる時代と文化の影響を示しています。ギロカストラの石造りの塔状家屋や、ベラトの丘に連なる多窓の建物は、この地域ならではの独特な建築様式を反映しています。
遺産の概要
地理と気候
ベラトとギロカストラはアルバニア南部の山岳地帯に位置し、地中海性気候の影響を受けています。温暖な気候と豊かな自然環境が、古代から人々の居住と文化の発展を支えてきました。
主要な遺跡
歴史地区には、城塞、伝統的な家屋、教会、モスクなどが含まれます。これらの遺跡は、それぞれの時代の文化と建築技術を示す貴重な物証です。
遺跡名 | 特徴・時代 |
---|---|
ベラトの城塞と住居群 | 丘の上に築かれた城塞内に教会や住居が広がる。オスマン帝国時代の多窓の家が特徴的。 |
ギロカストラの城塞と歴史地区 | 石造りの塔状家屋(クル)が立ち並ぶ。「石の町」の名の由来となっている。 |
ビザンティン様式の教会 | 主にベラトの城塞内に残り、貴重なフレスコ画が見られる(ビザンティン時代)。 |
オスマン様式のモスク | 両都市に点在し、オスマン帝国時代のイスラム文化を伝える(オスマン帝国時代)。 |
観光と保全
ベラトとギロカストラの歴史地区は、アルバニアを代表する観光地として多くの訪問者を引きつけています。一方で、歴史的建造物の維持は大きな課題です。遺跡の保存・修復作業や、観光客への啓発活動などを通じて、遺産が未来の世代に引き継がれるよう、持続可能な観光と保全活動が推進されています。