大ボルハン・ハルドゥン山とその周辺の聖なる景観とは
大ボルハン・ハルドゥン山とその周辺の聖なる景観は、モンゴル北東部のヘンティー山脈に位置する広大な地域で、2015年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この山は、モンゴル帝国を築いたチンギス・カンの生誕地であり、埋葬地であると伝えられている聖地です。古代からの山岳信仰と仏教が融合した独特の文化的景観が保たれており、モンゴル人にとって非常に重要な精神的支柱となっています。
世界遺産登録基準
- (iii) モンゴル帝国時代に確立され、現在まで続く山岳信仰という文化的伝統の顕著な証拠である点が評価されました。
- (iv) チンギス・カンへの崇拝と結びついた聖なる景観であり、歴史上重要な出来事や思想を物語る顕著な例として評価されました。
- (vi) チンギス・カンという世界史的に非常に重要な人物と直接的・有形的に関連する、普遍的な意義を持つ場所であることが評価されました。
遺産の概要と価値
大ボルハン・ハルドゥン山は、具体的な建造物よりも、自然そのものと、それを取り巻く無形の伝統に価値があります。
- チンギス・カンとの繋がり:『元朝秘史』によれば、若き日のテムジン(後のチンギス・カン)が敵から逃れる際にこの山に隠れて命を救われ、以来、篤く崇拝したとされています。この故事から、モンゴル建国の象徴と見なされています。
- 聖なる景観:山頂や特定の場所には、儀式に使われる石積みのオボーが数多く築かれています。この地域は、自然と人間の精神的な営みが一体となった文化的景観を形成しています。
- 生態系の豊かさ:中央アジアの草原とシベリアのタイガ(針葉樹林)の境界に位置するため、生物多様性が非常に豊かであり、手つかずの自然が聖性をさらに高めています。
現在でも巡礼や儀式が続けられており、生きている文化的伝統として保護されています。