概要
ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩石群は、トルコ中央部のアナトリア高原に広がる、奇岩群と歴史的・文化的遺跡が融合した地域です。数百万年前の火山活動で形成された凝灰岩の大地が、長年の風雨によって侵食され、「妖精の煙突」と呼ばれるキノコのような形の奇岩が林立する、幻想的な景観を生み出しました。人々はこの柔らかな岩を掘り抜き、住居や教会、さらには巨大な地下都市を築きました。この特異な自然景観と、そこに刻まれた人間の歴史が評価され、1985年にユネスコ世界複合遺産に登録されました。
自然と文化の価値
この遺産の価値は、壮大な自然の造形美と、それを利用して育まれた独自の文化が一体となっている点にあります。自然の価値は、他に類を見ない奇岩群が織りなす景観美にあります。一方、文化的な価値は、ローマ帝国時代のキリスト教徒が迫害を逃れるために築いた岩窟教会や修道院群に集約されます。これらの教会内部には、ビザンティン美術の優れたフレスコ画が数多く残されており、当時の信仰生活を今に伝えています。
主な見どころ
広大なカッパドキア地方には、自然景観と歴史的遺跡が点在しています。
| 見どころ | 特徴 |
|---|---|
| ギョレメ屋外博物館 | 30以上の岩窟教会が集中するエリア。「リンゴの教会」「暗闇の教会」など、保存状態の良いフレスコ画が見られる。 |
| 地下都市(デリンクユ、カイマクルなど) | 数千人から数万人が暮らせたとされる巨大な地下都市。アリの巣のように地下深くに何層にもわたって広がる。 |
| 妖精の煙突 | パシャバー地区やデヴレントの谷などで見られるキノコや動物の形をした奇岩群。 |
| ウチヒサル | 巨大な一つの岩をくり抜いて作られた城塞。頂上からはカッパドキアを一望できる。 |
世界遺産登録基準
- (i) 岩窟教会に残されたビザンティン美術のフレスコ画は、この時代における傑作である。
- (iii) キリスト教のイコノクラスム(聖像破壊運動)時代とその後の時代の独自の証拠である。
- (v) 岩を掘って作られた住居や村、地下都市は、現代まで続く人類の伝統的な居住形態の顕著な見本である。
- (vii) 浸食によって形成された渓谷、断崖、奇岩群が織りなす景観は、ひときわ優れた自然美を持つ。