ギョベクリ・テペとは
ギョベクリ・テペは、トルコ南東部に位置する新石器時代の遺跡で、2018年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。紀元前9600年頃から建設が始まったとされ、定住や農耕が本格化する以前に、狩猟採集民によって築かれた世界最古の巨大神殿とされています。その発見は、人類史の定説を覆すほどの衝撃を与えました。
人類史を書き換える発見
ギョベクリ・テペの価値は、「宗教が農耕や定住を生んだ」という新たな可能性を示した点にあります。従来は、農耕の開始によって余剰生産物が生まれ、人々が定住し、その結果として複雑な社会や宗教が生まれたと考えられてきました。
農耕以前の巨大神殿
しかし、ギョベクリ・テペの建設者たちは、まだ定住生活を送っていない狩猟採集民でした。彼らがこれほど大規模な宗教施設を建設するために集い、協力したという事実は、共通の信仰や儀式が人々を結びつけ、定住社会への移行を促した可能性を示唆しています。
精巧な石柱と彫刻
遺跡は、T字型の巨大な石灰岩の柱が円形に並べられた複数の建造物から構成されています。高さ5メートルを超える石柱には、ライオン、キツネ、ヘビ、鳥といった動物の姿が生き生きとレリーフで彫り込まれており、当時の人々の豊かな精神世界と高度な石工技術を物語っています。
世界遺産としての評価
ギョベクリ・テペは、以下の登録基準を満たしたことが評価されました。
- (i) 新石器時代初期の人類が生み出した、他に類を見ない記念碑的建造物であり、創造的才能の傑作である。
- (ii) アナトリア地方における記念碑的建造物の出現と、それに伴う文化的交流の始まりを示す重要な証拠である。
- (iv) 人類史における最初の巨大石造建築物であり、その技術的・組織的達成度は当時の社会の発展段階を示す顕著な例である。