概要
「ノヴォデーヴィチー修道院」は、ロシアの首都モスクワに位置する女子修道院で、2004年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。16世紀から17世紀にかけて形成されたこの修道院は、ロシア建築の中でも特に華麗とされる「モスクワ・バロック様式」の最高傑作と評価されています。また、皇族や貴族の女性たちと深く関わった、ロシア史の舞台でもありました。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されました。
- (i) 建築群全体がモスクワ・バロック様式の優れた一体性と完成度を示しており、人類の創造的才能を現す傑作である点。
- (iv) 16世紀から17世紀にかけてのロシア建築の発展段階を示す顕著な例であり、その後のロシアの宗教建築に大きな影響を与えた点。
- (vi) ロマノフ朝の皇族女性をはじめとする歴史上の重要人物と密接に関連し、ロシアの宗教的、政治的、文化的歴史を物語る場所である点。
モスクワ・バロック様式の傑作
ノヴォデーヴィチー修道院の建築群は、赤レンガの壁と白い石の装飾のコントラストが美しい、モスクワ・バロック様式で統一されています。
| 建築物名 | 特徴 |
|---|---|
| スモレンスク大聖堂 | 修道院で最も古い16世紀の建造物。内部には創建当時のフレスコ画や豪華なイコノスタシス(聖障)が残る。 |
| 鐘楼 | 高さ72メートルを誇る修道院の象徴。上部に行くにつれて細くなる八角形の塔がリズミカルな美しさを見せる。 |
| 生神女庇護教会(ポクロフスカヤ教会) | 食堂の上に建てられた教会で、モスクワ・バロック様式の典型的な装飾が見られる。 |
歴史的背景
ノヴォデーヴィチー修道院は1524年、ヴァシーリー3世によって創建されました。当初はモスクワ防衛の砦としての役割も担っていました。その後、ピョートル大帝の姉ソフィアが摂政の座を追われて幽閉されるなど、多くの皇族や貴族の女性がここで人生を送りました。修道院に隣接する墓地には、チェーホフやゴーゴリ、ショスタコーヴィチといった著名な文化人が眠っており、ロシアの歴史と文化において重要な場所であり続けています。