ペーチの初期キリスト教墓所
ハンガリー南部の都市ペーチにある、ローマ帝国時代の4世紀頃に造られた初期キリスト教徒のネクロポリス(共同墓地)です。2000年に世界文化遺産に登録されました。当時ソピアナエと呼ばれたこの都市は、属州パンノニアの行政とキリスト教の中心地でした。地下に築かれた墓室群には、旧約・新約聖書の場面を描いた色鮮やかなフレスコ画が数多く残されています。
世界遺産としての価値
この墓所群は、ローマ帝国末期におけるキリスト教の信仰と葬送儀礼を伝える、他に類を見ない重要な証拠です。墓室の構造と、そこに描かれた壁画の芸術性は、北ヨーロッパおよび西ヨーロッパのローマ属州における初期キリスト教美術の最も優れた例として高く評価されています。
- 登録基準(iii):現存する、または消滅した文化的伝統、または文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠。
- 登録基準(iv):人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた見本。
主な墓所
地下には複数の墓室が発見されており、特に以下のものが有名です。
| 墓所名 | 特徴 |
|---|---|
| ペーテル・パール墓室 | 使徒ペテロとパウロが描かれていることから名付けられた。フレスコ画の保存状態が良い。 |
| ワインの水差しの墓室 | エデンの園や最後の晩餐を象徴するワインの水差しが描かれている。 |
| ケルベロス墓室 | 当初は異教の墓所として造られ、後にキリスト教徒が使用したとされる。 |