概要
ラヴェンナの初期キリスト教建造物群は、イタリア北東部の都市ラヴェンナに点在する、5世紀から6世紀にかけての8つの宗教建築を対象とする世界遺産です。これらの建造物は、西ローマ帝国末期から東ローマ(ビザンツ)帝国統治時代にかけての初期キリスト教美術、特に壮麗なモザイク芸術の最高傑作群として知られています。
歴史的背景
ラヴェンナは、402年に西ローマ帝国の首都となり、その後、東ゴート王国の首都、東ローマ帝国のイタリアにおける総督府所在地として、約350年間にわたり政治・文化の中心地として繁栄しました。この時代、キリスト教の orthodoxy(正統派)と Arianism(アリウス派)が共存し、それぞれが壮麗な聖堂や洗礼堂を建設しました。その結果、ラヴェンナには、ローマとビザンツの文化が融合した独自の芸術、特にきらびやかなガラスモザイクの技術が花開きました。
主な構成資産とモザイク芸術
ラヴェンナの建造物群の最大の特徴は、壁面や天井を埋め尽くす色彩豊かなモザイク装飾です。これらは聖書の物語や皇帝の姿を描き出し、見る者を圧倒する神聖な空間を創り上げています。
- サン・ヴィターレ聖堂: ビザンツ建築の傑作。内陣には、ユスティニアヌス帝と皇后テオドラを描いたモザイクがあり、皇帝の権威と信仰心を示しています。
- ガッラ・プラキディア廟堂: 西ローマ帝国皇女の霊廟。内部は濃紺の天井に金色の星が輝くモザイクで覆われ、「星空の天井」として有名です。
- サンタポッリナーレ・ヌオヴォ聖堂: 身廊の壁面には、聖人たちの行列を描いた壮大なモザイクが広がります。
世界遺産登録と登録基準
これらの建造物群が持つ最高の芸術的価値と、初期キリスト教時代のヨーロッパにおける文化交流を物語る重要な証拠であることが評価され、1996年に世界文化遺産に登録されました。登録基準は以下の通りです。
- (i) 5世紀から6世紀にかけてのモザイク芸術の傑作。
- (ii) 初期キリスト教時代のヨーロッパの芸術・宗教・文化の交流を示す重要な証拠。
- (iii) 初期キリスト教の信仰と伝統を伝える他に類を見ない証拠。
- (iv) 初期キリスト教時代の宗教建築の発展を示す顕著な見本。
| 建築物 | 特徴 |
|---|---|
| サン・ヴィターレ聖堂 | ビザンツ建築の傑作で、ユスティニアヌス帝とテオドラ后のモザイクが有名 |
| ガッラ・プラキディア廟堂 | 「星空の天井」と呼ばれる濃紺の美しいモザイクで知られる |
| サンタポッリナーレ・ヌオヴォ聖堂 | 聖人行列のモザイクが壮麗 |
| ネオニアーノ洗礼堂(正統派洗礼堂) | 天井の「キリストの洗礼」のモザイクが見事 |