デロス島とは
エーゲ海のキクラデス諸島のほぼ中央に位置するデロス島は、ギリシャ神話においてアポロンとアルテミスの生誕地とされる聖地です。古代には宗教的な中心地として、後には地中海交易の拠点として繁栄しました。島全体が巨大な野外博物館のような様相を呈しており、その類まれな考古学的価値から1990年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。
遺産の価値と登録基準
デロス島は、紀元前3千年紀から人が住み始め、特にヘレニズム時代からローマ時代にかけて、宗教・商業の中心地として最盛期を迎えました。多様な文化が交流した国際都市の姿が、広大な遺跡群から浮かび上がります。
- 登録基準(ii): ギリシャ、ローマ、エジプト、フェニキアなど、地中海各地から集まった人々がもたらした多様な文化や建築様式が融合しており、古代世界の文化交流を物語っています。
- 登録基準(iii): 広範囲にわたって保存されている聖域、港湾施設、市場、住宅街は、ヘレニズム時代からローマ時代初期にかけて繁栄し、その後放棄された港湾都市の姿を伝える比類ない証拠です。
- 登録基準(iv): 神殿、劇場、個人邸宅などからなる遺跡群は、古代地中海世界の宗教的中心地および国際的商業港の構造を示す顕著な見本です。
- 登録基準(vi): アポロンとアルテミス生誕の地という神話は、古代ギリシャ・ローマ世界全体に絶大な影響を与え、島は普遍的な宗教的価値を持つ聖地とされました。
主な遺跡
- ライオンの回廊: 聖なる湖を守るように並ぶ、大理石のライオン像のテラス。紀元前7世紀のナクソス島からの奉納品です。
- アポロン神殿: 時代ごとに建てられた3つのアポロン神殿の遺跡が残っています。
- クレオパトラの家とディオニュソスの家: 美しいモザイク画で知られる裕福な商人の邸宅跡。当時の暮らしぶりを垣間見ることができます。
- 劇場: 約5,500人を収容できたとされる野外劇場と、それを取り囲むように広がる劇場地区。
観光と保全
現在、デロス島は無人島であり、近隣のミコノス島などから日帰りで訪れる観光地となっています。ギリシャ政府とフランスの考古学研究所が中心となり、遺跡の発掘、研究、そして風雨による浸食からの保護活動が継続的に行われています。