キトの市街とは
エクアドルの首都キトは、アンデス山脈中の標高約2,850mに位置する、空に最も近い首都の一つです。インカ帝国時代には重要な都市でしたが、16世紀にスペインに征服された後、植民都市として再建されました。その旧市街は、ラテンアメリカで最も広大かつ良好に保存された歴史地区として知られています。1978年、ユネスコが世界遺産リストの運用を開始した際、ポーランドのクラクフ歴史地区と共に、世界で最初に登録された12件のうちの一つ(世界遺産第一号)という栄誉ある歴史を持っています。
世界遺産登録基準
- (ii) スペインの植民者がもたらした宗教、芸術、建築様式と、先住民インディオの伝統的な技術や世界観が融合し、「キト派美術」として知られる独自のバロック様式を生み出しました。
- (iv) 丘や谷がちな地形に巧みに適応させた都市計画と、サン・フランシスコ教会やラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会に代表される壮麗な宗教建築群は、スペイン植民地時代の都市と建築の傑出した例です。
遺産の価値
保存状態の良い歴史的建造物群
キトの旧市街には、植民地時代に建てられた約130もの記念碑的建造物と、約5,000の歴史的建物が密集しています。度重なる地震にもかかわらず、多くの教会、修道院、邸宅が建設当時の姿を保っており、その保存状態の良さは際立っています。
ヨーロッパと先住民文化の融合
キトの教会の内部を飾る彫刻や絵画には、聖書の世界に太陽や月のシンボル、現地の動植物などが描き込まれるなど、キリスト教とアンデスの土着文化が融合したユニークな表現が見られます。これは、先住民の職人たちがヨーロッパの様式を学びつつ、自らのアイデンティティを作品に込めた結果です。
主な見どころ
旧市街の中心には、大統領府やカテドラルが面する独立広場があります。そこから歩ける範囲に、壮大なサン・フランシスコ修道院や、内部が金箔で覆い尽くされた豪華絢爛なラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会など、見ごたえのある歴史的建造物が点在しています。
| 建造物 | 特徴 |
|---|---|
| サン・フランシスコ教会・修道院 | 16世紀半ばに着工された南米最古級の教会。付属の広場も壮大。 |
| ラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会 | 内部の壁や天井が約7トンの金箔で装飾された、バロック様式の傑作。 |
| キト大聖堂(カテドラル) | 独立の英雄たちの墓所でもある、町の中心的な大聖堂。 |
| バシリカ教会 | ゴシック・リヴァイヴァル様式。ガラパゴスの動物を模したガーゴイルが特徴。 |
観光と保全
世界遺産第一号ということもあり、世界中から多くの観光客が訪れます。市は歴史地区の景観保全に力を入れており、建物の修復や電線の地中化などを進め、歴史的な雰囲気を守りながら、市民が暮らし、観光客が楽しめる街づくりを目指しています。