概要
モルドヴァ地方の教会群は、ルーマニア北東部のモルドヴァ地方に点在する8つのルーマニア正教会です。15世紀末から16世紀末にかけて、オスマン帝国の脅威にさらされる中で建設されました。これらの教会の最大の特徴は、聖書の物語や聖人伝を鮮やかに描いたフレスコ画が、建物の内壁だけでなく外壁一面にも施されている点です。その類まれな芸術的価値から、1993年に世界文化遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
この教会群は、以下の基準を満たしたことが評価されています。
- (i) 外壁を「絵で読む聖書」として装飾した、ビザンティン美術における独創的な傑作です。
- (iv) モルドヴァ地方で発展した、外壁画を持つ独自の教会建築の顕著な見本です。
外壁のフレスコ画
外壁のフレスコ画は、文字を読むことができなかった民衆にキリスト教の教えを伝えるための視覚的な教材として機能しました。また、絵具に使われた鮮やかな色彩、特にヴォロネツ修道院の「ヴォロネツ・ブルー」と呼ばれる青色は、500年以上経った今でも色褪せることなく見る者を魅了します。
主な構成資産(教会)
| 教会名 | 特徴 |
|---|---|
| ヴォロネツ修道院 | 「東方のシスティーナ礼拝堂」と称される。西壁の『最後の審判』のフレスコ画と鮮やかな青色が有名。 |
| スチェヴィツァ修道院 | 最も保存状態が良いとされる。城壁に囲まれ、『天国へのはしご』の壁画が圧巻。 |
| モルドヴィツァ修道院 | 黄色を基調としたフレスコ画が特徴。『コンスタンティノープル包囲』の歴史画が描かれている。 |