概要
ボイ渓谷のカタルーニャ風ロマネスク様式教会群は、スペイン・カタルーニャ州のピレネー山脈に抱かれたボイ渓谷に点在する9つの初期ロマネスク様式の教会堂の総称です。2000年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。周囲の自然景観と見事に調和した素朴ながらも美しい石造りの教会と鐘楼、そして内部を飾る優れたフレスコ画が高く評価されています。
歴史と特徴
ボイ渓谷はイスラム勢力の影響をほとんど受けなかったため、11世紀から12世紀にかけてキリスト教文化が花開き、多くの教会が建設されました。これらの教会は、北イタリアのロンバルディア様式の影響を受けた「カタルーニャ・ロマネスク様式」で建てられています。石を積み上げた壁、独立した高い鐘楼、外部の壁面を飾るロンバルディア帯と呼ばれるアーチ装飾が共通の特徴です。
主な教会
この遺産群の中でも特に有名なのが、タウル村にあるサン・クリメン教会とサンタ・マリア教会です。サン・クリメン教会は1123年に献堂され、その後陣を飾っていたフレスコ画『全能者キリスト(パントクラトール)』はカタルーニャ・ロマネスク美術の最高傑作とされています。現在は保存のため、オリジナルはバルセロナのカタルーニャ美術館に所蔵され、教会には精巧なレプリカが展示されています。
世界遺産登録基準
- (ii) ボイ渓谷の教会群は、ロマネスク美術・建築の重要な発展段階を示しており、特にカタルーニャ地方における様式の普及を象徴するものである。
- (iv) この教会群は、中世の山村における社会組織のあり方を反映したロマネスク様式の宗教建築の顕著な例であり、周囲の景観と一体化している。