バビロンとは
バビロンは、現在のイラクに位置する古代メソポタミアの都市遺跡です。紀元前18世紀の古バビロニア王国初代王スムアブムによって建設され、ハンムラビ王の時代に初めて地域の中心となりました。特に紀元前7世紀末から6世紀にかけての新バビロニア王国時代には、ネブカドネザル2世のもとで空前の繁栄を誇りました。長年の紛争や管理の問題を経て、2019年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたことが評価されました。
- 登録基準(iii):現存しない、あるいは稀な文化的伝統の証拠。古代メソポタミア文明、特に新バビロニア帝国の文化的伝統を伝える比類なき証拠です。
- 登録基準(vi):「旧約聖書」の「バベルの塔」や「バビロン捕囚」など、世界中の文化や宗教に影響を与え続ける出来事や伝統と直接的・有形的に関連しています。
遺産の価値
バビロンの価値は、古代世界の政治・文化・科学の中心地として、人類史に与えた計り知れない影響にあります。
- 歴史的価値:「目には目を、歯には歯を」で知られるハンムラビ法典が編纂された地であり、古代オリエントにおける法治国家の基礎を築きました。また、高度な天文観測が行われ、後の天文学に大きな影響を与えました。
- 文化的影響:壮麗な都市計画、巨大なジッグラト(聖塔)、そして伝説の「空中庭園」など、その名は古代世界の偉大さの象徴となりました。宗教的にも重要な場所であり、多くの神話や物語の舞台となっています。
遺産の概要
遺跡は首都バグダッドの南約85km、ユーフラテス川のほとりに広がっています。ネブカドネザル2世の時代に建設された都市の遺構が中心で、外壁と内壁に囲まれた広大な領域を含みます。
主要な遺跡 | 特徴 |
---|---|
イシュタル門 | 青い彩釉煉瓦で飾られた壮大な城門。神話の動物(ムシュフシュなど)の浮き彫りが施されている。(現在は復元されたものがベルリンのペルガモン博物館所蔵) |
行列通り | イシュタル門からマルドゥク神殿へと続くメインストリート。壁面はライオンの浮き彫りで飾られていた。 |
エ・テメン・アン・キの基壇 | 「バベルの塔」のモデルになったとされるジッグラト(聖塔)の跡地。 |
バビロンは、人類文明の黎明期を象徴する偉大な都市であり、その保護と研究は世界の歴史を理解する上で不可欠です。
参考文献
- UNESCO World Heritage Centre. “Babylon”. https://whc.unesco.org/en/list/278