アシャンティの伝統的建築物群とは
アシャンティの伝統的建築物群は、ガーナにかつて存在したアシャンティ王国の首都クマシ近郊に残る、伝統的な建築様式の建物の集合体です。これらはアシャンティ族の文化と歴史を物語る貴重な遺産として、1980年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。現存するのは、木と土、藁で造られた10軒の神殿(アボスム)が中心で、かつて繁栄した王国の建築文化を今に伝える最後の実例です。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと見なされ、世界遺産に登録されました。
- (v) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
遺産の価値と特徴
文化的価値
これらの神殿は、アシャンティ族の宗教観や宇宙観、社会構造を深く反映しています。建物の壁面には、アディンクラと呼ばれるシンボルや、神話、ことわざなどをモチーフにした幾何学的なレリーフが施されており、アシャンティ文化の精神性を象徴しています。現在も地域の信仰の場として機能しているものもあります。
建築的価値
木材の骨組みに竹を渡し、その上を粘土で塗り固める「ワトル・アンド・ドーブ」技法で建てられています。屋根は茅葺きで、急な気候の変化や豪雨から建物を守るために急勾配になっています。これらの建築技術や、壁面を飾る精巧なレリーフは、失われつつある西アフリカの土着建築の優れた例として高く評価されています。
主要な建造物
この世界遺産は、以下の神殿を含む10の建造物で構成されています。
- ベセアセの神殿
- アダコ・ジャチエの神殿
- エジス・ベセアセの神殿
参考文献
「アシャンティの伝統的建築物群」. UNESCO World Heritage Centre. https://whc.unesco.org/ja/list/35