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隊商都市ボスラ

隊商都市ボスラの概要

ボスラはシリア南部に位置する古代都市で、かつてはアラビア半島と地中海を結ぶ隊商路の要衝として栄えました。紀元前14世紀の記録にもその名が見られますが、特にローマ帝国時代にアラビア属州の首都として最盛期を迎えました。その後、ビザンツ帝国、イスラム帝国時代にも重要な都市であり続け、多様な時代の建築物が一つの都市に共存しています。特に、保存状態が極めて良いローマ劇場が有名で、都市全体の歴史的価値が評価され1980年に世界文化遺産に登録されました。

主な遺跡

ボスラの遺跡は、玄武岩で造られた黒い石造りの建築群が特徴です。

  • ローマ劇場: 2世紀に建てられた、最大1万5000人を収容する巨大な円形劇場。特筆すべきは、後にアイユーブ朝が築いた要塞によって劇場全体が完全に囲まれ、保護されたことです。これにより、世界で最も保存状態の良いローマ劇場の一つとなりました。
  • ナバテア人の門: 紀元1世紀にナバテア王国時代に建てられた門。
  • 大聖堂跡: 6世紀初頭に建てられた、初期キリスト教建築の重要な遺構。集中式平面の教会堂としては最初期のものとされています。
  • オマリ・モスク: イスラム教初期に建てられたモスクの一つで、預言者ムハンマドの生涯にも関わりのある場所とされています。

世界遺産登録基準

  • (i) 2世紀に建てられたローマ劇場は、その建築と保存状態において人類の創造的才能の傑作である。
  • (iii) ナバテア、ローマ、ビザンツ、イスラムという異なる文明が連続し、共存した稀有な証拠である。
  • (vi) 初期イスラム史における重要な出来事と密接に関連している。

保全状況

2011年からのシリア内戦により、ボスラも戦闘の舞台となりました。旧市街の一部や城塞が砲撃などにより損傷を受けたと報告されています。2013年に危機遺産リストに登録され、その後の状況が懸念されています。

建造物 特徴
ローマ劇場 保存状態が極めて良好。後に要塞に組み込まれた。
大聖堂跡 初期キリスト教の集中式教会堂の重要な例。
オマリ・モスク イスラム初期に建立された歴史あるモスク。
ナバテア人の門 ローマ時代以前のナバテア王国の痕跡を留める。

隊商都市ボスラの基本情報

                         
国名 シリア・アラブ共和国
世界遺産の名称 隊商都市ボスラ
遺産の種類 文化遺産
登録年 1980
拡張・範囲変更
危機遺産 登録(継続)
危機遺産登録期間 Y 2013
登録基準 (ⅰ)(ⅲ)(ⅵ)
備考
範囲(ヘクタール)116.2
地図

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