アフラージュ、オマーンの灌漑システムとは
アフラージュは、オマーンに古くから伝わる伝統的な灌漑システム群で、2006年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。このシステムは、山麓の地下水源から水路を引き、高低差(重力)のみを利用して乾燥地帯の農地や集落へ水を供給するものです。約2500年前から存在するとされ、現在でも約3000のアフラージュが国内で利用されており、オマーンの農業と人々の生活を支える生命線となっています。
世界遺産の登録基準
- 登録基準(v): 極度の乾燥地域において、限られた水資源を持続的に利用し、公正に分配することで共同体を維持してきた、伝統的な土地利用と水管理の顕著な見本である。
遺産の価値と概要
アフラージュの価値は、その卓越した工学技術だけでなく、水を持続可能な形で利用し、共同体で公平に分配する社会的システムにあります。水源(母井戸)、地下水路、地上水路、そして各農地への分水路といった一連の構造は、エネルギーを使わずに水を長距離輸送することを可能にしました。また、水の分配は、各家庭の貢献度や土地の広さに応じて厳密に定められたルールに基づいており、紛争を防ぎ共同体の結束を維持する役割も果たしてきました。世界遺産には、国内に数多く存在するアフラージュの中から、特に代表的な5つが登録されています。
登録されている5つのアフラージュ
- ファラジ・アル=ハトミーン
- ファラジ・アル=マルキ
- ファラジ・ダーリス
- ファラジ・アル=ムヤッサル
- ファラジ・アル=ジーラ
アフラージュは、厳しい自然環境に適応し、繁栄を築いてきたオマーンの人々の知恵と努力の結晶であり、現代における持続可能な資源管理の優れた手本と言えます。